人を喜ばせたいという気持ちは、料理人時代も今も変わりません。
僕の前職は料理人。老舗ホテルのメインダイニングで4年間シェフをしていました。両親が料理人で子供の頃から料理が身近だったのです。その一方で絵を描くことや書道にも力を入れていました。最もデザインの道へ進むきっかけとなったのは、料理店を訪れた時に抱いていた気持ちです。料理が素晴らしくても、伝え方がイマイチで「もったいないな…」と感じることが多々ありました。「デザイナーを目指します」と告げた時は、周りに驚かれましたね。特に職場の先輩方には「やってきたことをムダにする気か」と言われたことも。でも、やりたいことにフタをして生きるのは違う、と飛び込んでいきました。とはいえ、不安でしたよ。デザインについて何も知らない自分に果たしてできるのか…。でも、いざ入学してみると、僕のような境遇の仲間がたくさんいてホッとしたのを覚えています。
現在は『canaria』でデザイナーとして働いています。canariaのデザインには力を感じていましたし、断片的で一過性のモノづくりではない姿勢に共感を覚えて、自分もそんな仕事がしたいと思っていました。不思議な縁で、料理人時代に憧れていた世界的なフレンチの大会で使用されるデザインを手がける機会もありました。前職の知識も少なからず活かされてますね。何より嬉しかったのは、「料理人を辞めます」と告げた時に応援してくれた大先輩が、独立してレストランを開業する際、ロゴを作らせてくれたこと。デザインの道に進みましたが、料理との縁は続いています。デザインのインスピレーションも、やはり料理から得ることが多いですね。人を喜ばせたいという気持ちも、料理人時代も今も変わることはありません。