テーマ:「地域の価値を最大化するまちづくりデザイン論 ~地域の持つ文化・歴史・自然・コミュニティの魅力を活かし、持続可能で創造的な都市づくりの可能性を探る~」
スペースコンポーザー
谷川 じゅんじ 氏Junji Tanigawa
- PROFILE
- 1965年生まれ。2002年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。 “空間をメディアにしたメッセージの伝達”をテーマに、さまざまなイベント・商空間開発・地域活性化事業など、シナジスティックな多領域協創を実現。独自の空間開発メソッド「スペースコンポーズ」により、環境と状況を組み合わせたエクスペリエンスデザインによる「場の記憶」の創出を目指している。主なプロジェクトとして、パリ・ルーブル宮装飾美術館「Kansei展」、平城遷都1300年祭記念「薬師寺ひかり絵巻」、NIKE「WHITE DUNK」、LEXUS Store Design マスタープラン、スマートシティ前橋アーキテクト、地域活性化事業アドバイザーなど。

第1部:講義「地域の価値を最大化するまちづくりデザイン論」
講義1
本日のプレックスプログラムは、JTQ株式会社代表・ビジオニア・スペースコンポーザーの谷川じゅんじさんをお迎えします。独自の空間開発メソッド「スペースコンポーズ」を持つ谷川さんですが、自身のお仕事については「ハードとしてのまちづくりとデジタルでつながっていく社会を結節させながら実コミュニケーションを形にしていくもの」と表現されます。

講義2
時間・空間・人間の中心にある部分を「間のデザイン」と呼び、この部分がコミュニケーションにおいて大きな影響を及ぼすと話す谷川さん。「コズミックカレンダー(地球誕生からの現在までを1年に換算したカレンダー)では、人間の誕生から現在までわずか3秒しか経っていません。その3秒で激変した地球。そして3秒後の地球を想像する。次の世代に向け、どんな未来と渡すべきかをここ数年で考えるようになりました。」

講義3
加速する少子高齢化社会では、人口は減る一方で、1人あたりの寿命は伸び続けています。今から25年後には人生100歳まで生きるのは珍しくない時代がやってくると谷川さんは話します。「60歳で退職したと考えるとその後が30年以上もある人生。その生き方を再考していく必要があります。人口が減り労働・消費者が減る中で経済市場は頭打ちになります。今までと同じことをやっていくと、続かなくなるのです。」

講義4
そんな中、そんな中で国も新たな指標「GDW」を導入し、体制を立て直そうとしています。「GDP(国内総生産)」から「SDGs(持続可能な開発)」、そして「GDW(国内総充実)」へと推移しており、それは「消費者」から「生活者」に、「費やし消していく」から「活き活きと生きる」へスタンスが移行することだと谷川さん。「マーケット軸からライフスタイル軸へ変化することで、人々の生き方が変わることを示しています。」

講義5
人間の心身と社会的な健康を意味する概念「ウェルビーイング」について、谷川さんは「物質的な豊かさだけでなく、心身そして社会的にも豊かである状態を目指すことが人間本来の性分」と話します。また、最近では日本的な概念である「IKIGAI(生きがい)」という指標が海外で見直されているそう。地域幸福度として定量化した指標に基づき、ウェルビーイングで幸福度をチェックするといった試みも導入されつつあるといいます。

講義6
谷川さんがまちづくりに関わっている群馬県前橋市では、古くよりシピックプライド(地域社会への貢献意識)が根付いており、私財を投じ地元に還元するという官民共創のまちづくりが実践されています。谷川さんはクリエィブシティのアイコンとして「ホテル」「サードプレイス」「ストリート」の三つを起点に市民のみなさんと一緒に街を活性化していること、また「Digital Green City」と銘打ち地域のデジタル化を実践していることをお話ししてくださいました。

第2部:ワークショップ「前橋の新しいまちのマグネットをデザインする」
ワークショップ
ここからはワークショップに移ります。今回のお題は「前橋の新しいまちのマグネットをデザインする」です。前橋のマグネットとなる、人を惹きつけるコンテンツをチームごとに考えていいきます。学生たちからは、アートと公園を複合した施設、子供が乗りたくなる観光巡回バス、人が学び合える民宿、職人の技術を見ることができる施設、ITやデジタル技術を体験できるアミューズメントパーク、ライブハウスを活用した街の活性化など様々な意見が挙がりました。

総評
最後に谷川さんより総評をいただきました。「皆さんお疲れ様でした。短い時間の中で提案をまとめるのは大変な作業だと思いますが、僕は打ち合わせの際に持ち帰らないということを自分の中のルールにしています。打ち合わせの場が1番クリエイティブだと考えていて、提案をぶつけることで相手が様々な反応をして、それに対してその場で応えていくということを意識しています。商業クリエイティブをやっていく上では、限られた時間の中でなるべく深度の深い議論をするためのトレーニングを普段から積んでおくことが重要です。自分が考えたものを誰かに伝えて、それが形になるところまでやったときにクリエイターとして大きな喜びを感じることができるので、そういう経験を楽しんでいただけたらなと思います。」谷川さん、ありがとうございました!
