テーマ:「ビジュアルデザイン」
groovisions代表
伊藤 弘 氏Hiroshi Ito
- PROFILE
- 東京のデザイン・スタジオgroovisions代表。グラフィックやモーショングラフィックを中心に、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッションなど多様な領域で活動する。 1993年京都で活動開始。PIZZICATO FIVEのステージヴィジュアルなどにより注目を集める。 1997年東京に拠点を移動。以降、主な活動として、リップスライム、FPM(Fantastic Plastic Machine)などの、CDパッケージやPVのアートディレクション、100%ChocolateCafe.をはじめとする様々なブランドのVI、CI、『Metro min』誌などのアートディレクションやエディトリアルデザイン、メゾンエルメスのウィンドウディスプレイのディレクション、『ノースフェイス展』など展覧会でのアートディレクション、農林水産省の映像資料でのモーショングラフィック制作など。

第1部:講義「ビジュアルデザイン」
講義1
本日のプレックスプログラムは、グルーヴィジョンズ代表でアートディレクターの伊藤弘さんにお越しいただきました。「ざっくりいうとビジュアルデザイン、人・モノ・コトに関わるコミュニケーションを設計しています。最近のメディアは特に情報を運ぶだけではなく、メディアそのものが意味を持っているので、どういう経緯で情報伝達をするのかが大切になっています」と伊藤さん。

講義2
伊藤さんが仕事をするなかで大切にされているキーワードが4つあるといいます。1つ目は『フレームレス』。もともとデジタル空間ではサイズやフレームは設けられているわけではなく、現実世界に落とす時にサイズやフレームを固定しているだけと伊藤さんは言います。2つ目は『男/女』で、世の中には男性向け女性向けとしているものが多くあるなか、あえてどちら向けでもない中性的なものをつくるように心がけているそう。

講義3
キーワード3つ目は『平面/立体』。モノ(現実世界)とイメージの間を行ったり来たりしながら、二次元と三次元を行き来するようなものを意図的に作っているといいます。4つ目は『レディメイド』で、モノを一からつくることだけがデザインでないと伊藤さん。「モノを作らなくてもクリエイティブに関わる仕事もたくさんあります。」

講義4
アートディレクションをするときには、何らかの仕組みやルール、仕掛けなどがあると伊藤さん。「なにか自由に作ってくれと言われると難しいですが、何か制約があったほうが逆に自分を出せたりしますよね。ただその制約は誰かが与えてくれるわけではなく、自分でつくらないといけない。皆さんにもそれをつくる醍醐味みたいなもの感じてほしいです。」

第2部:ワークショップ「学校の講師になったつもりでデザインの課題を考える」
ワークショップ1
後半のワークショップのテーマは『学校の講師になったつもりでデザインの課題を考える』です。伊藤さんはワークショップの意図について次のように話します。「デザインを学ぶ人が自ら学ぶものを考えることは、メタ思考に繋がります。逆に言うと自分がデザインに何を求めているか、何を学びたいかということを自問することになると思います。AIを活用していくこれからの社会においても、メタ思考のメソッドはとても重要になります。」

ワークショップ2
学生たちが発表したアイデアをいくつか紹介します。『今着ている服の質感を記号化する』は、情報をビジュアルで整理する力を鍛える課題です。「感触みたいなわかりにくいものを言語化すると、さらさらとか以外にもいろいろな複雑な感情がでてくると思います。それを形にすることが重要なので、考え出すと深いテーマでおもしろいです」と伊藤さん。

ワークショップ3
続いては、『変なことをさせたくなるポスターをつくる』という課題。例えば歯磨きをした後に食べ物を食べたくなるなど、常識を打ち破る視点を他者に与えるデザインをしたいという想いから生まれたアイデアです。伊藤さんからは「ある人から見たら変なことでも、他の人から見たら変ではないかもしれない、ある意味コミュニケーションの根幹にかかわることでもあるかもしれません」とコメントが。

総評
最後に総評をいただきます。「メタ認知する癖をつけることは、ものをつくるときに重要な武器になってきます。最初のきっかけが掴めないとなかなかその思考になれないけど、逆上がりと同じでちょっとしたコツが掴めれば訓練していくことができます。ぜひこれからも新しいものの考え方を学習していってほしいです。」伊藤さん、ありがとうございました。
