PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「AI時代に求められるクリエイティブ×ビジネスの必須スキル所作(Shosa)」

株式会社KiQ 代表 / クリエイティブディレクター

菊地あかね 氏Akane Kikuchi

PROFILE
宮城県生まれ。18歳でNYのFIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)にてデジタルデザインを学んだのち、日本文化の本質を探究するため 芸者修行に取り組む。デイリーフレッシュでチーフデザイナーを務めたのち独立し、クリエイティブスタジオのKiQ(キク)を主宰。国内外で文化をテーマにしたエクスペリエンスデザインや企業とのコラボレーションを発表し、分野横断的な視点を活かした革新的なアプローチが国内外で評価されている。文化庁メディア芸術祭・DFA・Windows MixedReality最優秀賞、iFデザインアワードなど受賞歴多数。

第1部:講義「DESIGN FOR HUMANITY」

講義1

本日のプレックスプログラムは、株式会社KiQ代表/クリエイティブディレクターの菊地あかねさんをお迎えします。テーマは「DESIGN FOR HUMANITY」。AIが普及しつつある現代社会において、今後より良い世界を作るためにはどうすればよいのか。デジタルと人間の共存をどのようにデザインするかについて、菊地さんのクリエイティブディレクターとしての視点を共有して頂きます。

講義2

菊地さんが大事にしていることは、「問いを創造すること」「美しさとは何かを聞く物事を目利きすること」。その鍵になるのが日本人特有の感性だと言います。「例えば千利休のお茶の世界では、季節の移ろいを語るなど、相手の話を聞くことから何かをクリエーションしてきました。日本の伝統文化には、相手との関係性をデザインする繊細な所作が根付いています。

講義3

菊地さんとKiQを語る上で欠かせないキーワードである「所作(Shosa)」。その発端は、アメリカでの大学生活の中で生まれました。自分の意見をダイレクトに相手に伝えるというアメリカの文化が、相手の気持ちを汲み取る日本のものとは真逆であったことに衝撃を受けた菊地さんは、自国の文化を探究すべく芸者の世界に入ることを決意します。所作はお茶や日本舞踊、着物の着付けなどの作法を重んじており、個々の技法を統合した総合的な美意識としても機能しています。

講義4

「所作は言葉として根本的にはポジティブな価値観を持ちながらも、その意味が形骸化していると感じました。しかし、所作には単なる伝統を超えた、現代のデザインやビジネスに応用可能な力があります。日本人の日常の中に文化として存在する他者への敬意は日本独特のもので、この感覚をデザインに応用することで、新しいユーザー体験やブランディングの手法が生まれます。」

講義5

AIが普及しつつある現代社会において、デジタル化する社会と人間はどのように共存していけばいいのでしょうか。菊地さんは、自分らしさを追求することが大切であると説きます。「クリエイターは、AIに使われるのではなく、AIを使う立場になること。爆発的なスピードでAIが進化し、人間を凌ぐ存在になると言われていますが、自身のスタンスを忘れないことが重要になると思います。」

第2部:ワークショップ「AIで生成された動画を観て、どう感じるか?」

ワークショップ1

後半は2つのワークショップを実施します。1つ目に行うワークショップは、AIが生成した動画を観て、自分が何を感じたのかを言語化するという内容です。その目的は、所作が無意識に与える影響を実感し、人間の感性の役割を理解すること 。2種類の動画を通じて、所作の影響力について考えていきます。

ワークショップ2

次に行ったのは、ある問題に対してAIの考えと自身の考えを比べるというワークショップ。デザイナーとしての意思決定が、データドリブンなAIとどのように異なるかを比較します。市場調査の結果、コーポレートブランディングの方針を変更してもROI(投資利益率)に見合わないことが分かった場合にどうするか?という問いに向き合います。このワークを通じ、デザインの意義と直感の価値を再認識しました。

総評

最後に改めて所作が持つ特徴を伝えていただきました。「所作とは、目に見えない美意識やコミュニケーションを形にするものです。」 データを集めることが難しく、正解の定義が難しい。だからこそ、AI時代のデザインにおいて、無意識の行動や直感をどう活かすかが問われています。背景を汲み取ることができるのが人間であり、ヒアリングの場においてその場で迅速に適切な反応ができる人間の強みを最大限に引き出すためとしての所作(Shosa)が必要不可欠な時代になりつつあります。」菊地さん本日はありがとうございました!