PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「未来を描く手 – AIが紡ぐ創造と再解釈の旅路」

建築家

福田 一志 氏Kazushi Fukuda

PROFILE
建築家。武蔵野美術大学/大学院卒業、ヴェネツィア建築大学(イタリア政府給費留学生として)留学、設計事務所勤務を経て、現在一級建築士事務所インターコア代表。専攻建築士(統括設計/まちづくり/教育・研究)、一級建築士、インテリアプランナ一、インテリアコーディネーター、Vectorworksプロフェッショナルアドバイザー。家具から都市計画まで幅広い分野で設計活動を行う。ヨーロッパ・アメリカ・アジアと、海外での生活/仕事での経験を生かし、独自の世界観で時の経過のなかでも風化せず存在し続ける空間づくりに没頭中。近年は、「デザインを行う思考過程の中でどの様にコンピュータとの関係を築くか」などをテーマに、教育の分野にも携わる。東京デザインプレックス研究所講師。http://www.i-core.jp

第1部:講義「未来を描く手 - AIが紡ぐ創造と再解釈の旅路」

講義1

今回のプレックスプログラムの講師は、当校のCAD/3DCG専攻で講師としてご尽力いただいている、建築家の福田一志さんです。講義のテーマは、近年デザインの世界でも活用されているAIについて。次世代のデザイナーにとって、AIはどのような存在で、どのように相対するべきかを一緒に考えていくプログラムです。

講義2

まずは、AIが作成したというスライドのデータを使用して、福田さんのプロフィールを紹介していただきます。大学院を経てベネチア建築大学に留学し、多彩なプロジェクト(中国・ベトナムでの都市開発など)に参加。その後、教育者としてBIM・3次元設計の普及に尽力し、国内初の実践解説書を執筆。建築とIT技術の融合を推進されています。AIによるスライドは画像や図とともに見やすくまとめられていることが分かります。

講義3

2022年にChatGPTが公開され、技術が加速度的に進化している今、福田さんは日本のAIを含む最先端テクノロジーの情報が遅すぎると感じているそう。その理由の1つは、元々の情報が英語であること。「日本語に訳されてから利用しようとすると半年~1年のタイムラグが発生しし、進化の速度における半年前の情報は過去の遺物になってしまいます。情報は鮮度が大事です。」

講義4

福田さんがデザイナーとして大切にしていることは、「モノの見方(視座)」。アインシュタインが提言した、“Intelligence is sharp in its methods and tools, but blind to purpose and values“(知性はその方法と手段においては鋭いが、目的や価値観には盲目である) という言葉に大切なコアがあるといいます。「目先の技術を追いかけるのは面白いことだが、本来の目的を見失いがちになるもの。AIが普及してもしなくても一貫して教訓にしています。」

第2部:ワークショップ「AIを活用するとなにが起こるかグループで考えよう!」

ワークショップ1

ワークショップ前半では、AIのメリット・デメリットについて話し合います。メリットとして出た意見は、アイデア出しが容易になる、生産性が上がる、人間関係を気にしなくて良い、など。デメリットとしては、人が活躍できる場が少なくなる、思考力が乏しくなる、指示の出され方によりクオリティが変わる、真実を言っているかわからない、使うことによって人間関係がより面倒くさくなる、などの意見が出ました。

ワークショップ2

これらの意見をリサーチAIに分析してもらいます。まずは分析したデータをレポートに書き出し、次にマインドマップとして視覚化、さらにそれらをまとめたプレゼンシートを作成、というように次々とデータが出来上がっていきます。数日かけてリサーチをしなくても、プレゼンシートの作成方法が分からなくても、わずか数分で報告書が出来上がるAIの技術に驚かされます。

ワークショップ3

ワークショップのまとめとして、現在公開されている最新のAI技術(生成AI含む)を紹介してくださった福田さん。さらに遊びとして、AIがヒット曲さながらの歌詞と曲を作り上げる工程を見せてくれました。その後には東京デザインプレックス研究所の要素を元に作詞作曲したテーマソングも出来上がり、技術の進化を目の当たりにすることができた授業となりました。

総評

「現在はバラバラのプラットフォームで動いているAIソフトが、近いうちにワンプラットフォームで完結するような未来がやってくると思います。テクノロジーは進化し続け、誰でも取り扱うことができるようになるはずです。しかし、何をどのように決定するのか、舵を切る方向を定めていくことがとても大切になってきます。この舵取りが上手くできるのがデザイナーであるはずなので、今日のプログラムでお話したことを胸に刻んで成長を遂げていってください。」福田先生、ありがとうございました!