テーマ:「自在な発想と表現力」
キギと創造株式会社代表/アートディレクター
植原 亮輔 氏Ryosuke Uehara
- PROFILE
- 1972年北海道生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。DRAFTを経て、渡邉良重とともに2012年にKIGIを設立。企業やブランド、製品などのアートディレクションのほか、琵琶湖周辺の職人たちと立ち上げたオリジナルブランド「KIKOF」、プロダクトブランド「D-BROS」などを手掛ける。「OUR FAVOURITE SHOP」を2015年より運営。2017年に宇都宮美術館にて大規模個展「KIGI WORK & FREE」を、2022年にはKIGI10周年の展覧会「all is graphics」を開催。越後妻有アートトリエンナーレ2018 大地の芸術祭<方丈記私記>に「スタンディング酒BAR・酔独楽」を出品。2019年、一連の「酔独楽」プロジェクトにてADC会員賞受賞。東京ADCグランプリ(2015)、第11回亀倉雄策賞(2009)など受賞。
第1部:講義「自在な発想と表現力」
講義1
今回のプレックスプログラムの講師は、キギと創造株式会社代表の植原亮輔さんです。株式会社ドラフトを経て、2012年に渡邉良重さんと共にキギを設立。クリエイティブユニットとして、グラフィック、ブランディング、プロダクト、空間、映像、作品制作など、多岐にわたるプロジェクトを手掛けられています。これまで植原さんが関わってきたデザインの足跡をたどりながら、ものづくりに欠かせない視点や考え方についてお話を伺います。
講義2
キギを共に設立した渡邉良重さんとは、1999年、宮城県仙台市のベーカリーカフェ「Caslon」の立ち上げをきっかけに協働していきます。0から始まったCaslonのプロジェクトですが、ロゴ・ポスター・メニュー・空間デザイン・webサイトなど、植原さんと渡邉さんの阿吽の呼吸により、およそ半年という短い期間で完成しました。このプロジェクトのほかにも、ドラフトのブランド「D-BROS」のプロダクトデザインなども担当し、キギ設立後もさらに2人での仕事は増えていったそうです。
講義3
キギで立ち上げたプロダクトレーベル「ASSEMBLEDISASSEMBLE」のアイウェアブランド「TWOFACE」は、正面と側面から見た“かけ姿”の印象が変わる二面性をコンセプトにしています。プロダクトの1番の特徴は、フレームと肢の関係を水平垂直にすることにこだわったレンズのカット構造。正面からみるとスタイリッシュ、側面からみると無骨な物質感が引き立つデザインです。TWOFACEのロゴは、”O”にシュッと縦線が入っており、メガネのレンズのカットがそのままロゴデザインにも反映されています。
講義4
続いてお話しいただいたのは、3年に1回開催されている越後妻有アートトリエンナーレ2018 に出品した「スタンディング酒BAR・酔独楽〈よいごま〉」についてです。植原さんが自らの持っているノウハウを全てぶつけようと制作されたのが、4畳半のスペースの日本酒バーカウンターと、独楽のようにに回る盃でした。盃は、最後まで飲み干さないと置くことの出来ない「可杯(べくはい)」から着想を得たといいます。日本の伝統文化、慣習がぎゅっと詰まった作品となりました。
第2部:ワークショップ「植原さんに質問コーナー!」
ワークショップ1
講義の後半は、学生から植原さんへの質問コーナーの時間が設けられました。学生の質問と植原さんの答えをいくつか紹介します。Q.デザインのインプット方法・アウトプット方法は?→A.クライアントの要望に応えるためには、引き出しを増やしておかなければならない。デザインに関しては、色々なことを経験して考えを深めることが作品づくりにつながると思います。アウトプットは、テクニックの数や質が重要。1案で終わりにするのではなく、何度も描いたり、作ったり、練習します。あとは、途中で諦めずに最後までやり遂げることが大切です。
ワークショップ2
Q.世の中に色々なデザインやアイデアが溢れている中で、どのように独自の新しいものを作り出せば良いのか。→A.まず、アイデアと表現の2つの軸があります。アイデアの場合は、必ず構造があるので、表面だけを見るのではなく、構造を分析します。表現はソースを他ジャンルから持ってくる方法もおすすめです。アイデアとデザインをまとめてではなく、別々に考え、それを繋げていくと面白いものができると思います。
ワークショップ3
Q.キャラメル菓子店「CARAMEL MONDAY」や、JAGDA賞2024を受賞したワイン「Livvera」のロゴデザインは、どのようにして完成したのか?→A.CARAMEL MONDAYは、満月が少しずつ溶けて、ポタポタと森に黄金の湖を作る絵の世界観が文字になればいいなと思い作りました。「M」は山を、「O」は2つ重ねてムーンと読めることで月を想起させるようなデザインになりました。Livveraのロゴは自由な手描きスケッチから始めて、理屈抜きに絵を描くようなイメージで文字を描いたことで、「L」はシャープに、「e」は丸みがキュートに仕上がりました。
総評
最後には、先日プログラムにご登壇された柿木原政広さんや、水野学さんとのドラフト時代のエピソードについてお話しいただきました。「入社してからは、先輩たちから怒られながらも一生懸命仕事に取り組んでいました。仕事終わりには、水野さんと柿木原さんの車に乗って色んなところに連れていってもらったり、海外にもよく一緒に行きました。」本日は、ものづくりに欠かせない視点や考え方について教えていただきました。植原さん、ありがとうございました。