PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「“想い”がつながり、広がっていくこと」

グラフィックデザイナー/アートディレクター

柿木原 政広 氏Masahiro Kakinokihara

PROFILE
1970年広島県生まれ。ドラフトを経て、2007年に10(テン)を設立。
主な仕事に、singingAEON、R.O.U、藤高タオルのブランディング、角川武蔵野ミュージアム、静岡市美術館、NEWoMan YOKOHAMA、信毎メディアガーデンのCIとサイン計画、また、美術館のポスターを多く手がける。カードゲーム「Rocca」をミラノサローネに2012年から出展。著作に絵本「ぽんちんぱん」「ねぇだっこ」など。
2003年JAGDA新人賞、原弘賞、東京ADC賞、JAGDA賞、NYADC賞、ONESHOW PENCIL賞、GOOD DESIGN賞など受賞多数。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。 

第1部:講義「“想い”がつながり、広がっていくこと」

講義1

今回の講師は、8年ぶり3回目のご登壇となる、アートディレクターの柿木原政広さんです。株式会社ドラフトを経て、2007年に株式会社10を設立されました。まずスクリーンに映し出されたのは、柿木原さんが10年ほど在籍していた株式会社ドラフトの代表、宮田識さん。デザインをする上で「思いやりと気づかい」が重要であることを、宮田さんから教えられたといいます。

講義2

宮田さんの言葉「相手の考えていること、感じていることを、言葉の背景、その場に流れている空気、目線や表情から、相手が何をしたいと思っているのかを感じ取り、アイデアを考える。」10を立ち上げた後も柿木原さんが大切にしていることの1つです。コンプレックスに感じていた美大ではなく一般の大学出身である経歴も、逆にポジティブに捉え、自分だからこそできる魅力的なことはないかと常に考えているそうです。

講義3

続いてお話しいただいたのは、『富士中央幼稚園』のアートディレクションについて。「発想の自由さを大切にしたい」という園長先生の言葉から、クマのような形だけど、カエルだったりパンダだったり、捉え方によって変化するロゴマークを園の象徴として制作しました。完成したロゴマークについてドラフト代表の宮田さんに相談すると「本質とずれていなければ大丈夫」と言われたことをきっかけに、“本質”とは何かを考えたといいます。

講義4

『角川武蔵野ミュージアム』の動くピクトグラムのサインについてもお話いただきました。シンプルな印象のピクトグラムでも、感情を入れて動かすことによって冷たい線が温かい線に変化し、見る人を楽しませるデザインになります。 特に印象的だったのは、トイレのサインが、時間が経つと足を曲げてトイレを我慢している様子に見えてくるというもの。ユーモアのあるピクトグラムのサインに学生たちも釘付けです。 

第2部:ワークショップ「タイポグラフィ」

ワークショップ1

後半は3つのワークショップを行います。1つ目のテーマは、『文字にニュアンスを込める』です。例えば、ひらがなの「あ」には、びっくりする様子の「あっ!」や、残念な感情の「あ〜」など、さまざまなニュアンスを込めることができます。各々好きなひらがな1文字を選び、その文字から感じる自分なりのニュアンスを形にし、5分間で表現に落とし込んでいきます。

ワークショップ2

2つ目のワークショップは『文字の完成度を知る』作業を行います。「夢」「競」「河」の明朝体・ゴシック体の中から1つを選び、10分間で正確にレタリングしていきます。レタリングは、「描く技術ではなく見る技術」と話す柿木原さん。文字を細かく正確に見ることで、その文字の法則性を導き出し、全体のバランスも整えることができます。その文字が、長い歴史の中で現在の形になった背景を想像することも、重要なポイントです。

ワークショップ3

最後は、ワークショップ2で選んだ文字にニュアンスを込めて描いていきます。『文字の完成度を理解したうえで、文字に感情をのせながら、デザイン化していく』という作業は、柿木原さんも普段から行っているといいます。描き終えたらチーム内でプレゼンテーションをして、感想を伝え合います。そうすることで、第三者が自分の作品をどのように捉えたのかを知ることができ、新たな視点の発見に繋がります。

総評

最後に柿木原さんよりメッセージをいただきました。「自分は、チャーミングなことが好きで、人が面白がってくれたらいいなと思いながら、日々デザインをしています。皆さんも自分が好きなこと、面白いと思うことを発見して、それに対して一緒に面白がる仲間を作り、想いが広がっていくと、デザインが世の中を豊かにしたり、デザインが楽しいものになっていく気がしています。“想い”が広がっていくことを大切に、デザインしていってください。」