PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「共感のブランディング」

株式会社スマイルズ代表取締役社長

野崎 亙 氏Wataru Nozaki

PROFILE
京都大学工学部卒。東京大学大学院卒。2003年、株式会社イデー入社。新店舗の立上げから新規事業の企画を経験。2006年、株式会社アクシス入社。デザインコンサルティングという手法で大手メーカー企業などのビジネスプロデュースや経営コンサルティングに従事。2011年、スマイルズ入社。全ての事業のブランディングやクリエイティブの統括に加え、入場料のある本屋「文喫」、東京ミッドタウン八重洲「ヤエスパブリック」など外部案件のコンサルティング、プロデュースを手掛ける。ACC CREATIVITY AWARDS 2020デザイン部門審査員、2024年度グッドデザイン賞審査委員ユニット長。著書:『自分が欲しいものだけ創る!スープストックトーキョーを生んだ『直感と共感』のスマイルズ流マーケティング』(日経BP) https://creative.smiles.co.jp https://www.facebook.com/wataru.nozaki.3

第1部:講義「独自の視点で価値と価値観を生み出す仕事をする」

講義1

本日はスマイルズ取締役社長の野崎亙さんにお越しいただきました。講義冒頭、「私はデザインは好きではあるけど、経歴上デザインを一切やらずに来ました」と話される野崎さん。それが結果的に別の視点をもたらし、クリエイティブに良い影響をもたらしているといいます。スマイルズは「妄想を実業に。クリエイティブという知恵をたずさえて。」をというスローガンを標榜し、自分事業とクライアント業を兼務する形で動く特殊な会社であると野崎さんはおっしゃいます。

講義2

CI・BI、新業態開発、地方創生からエリア開発まで幅広く手掛けているスマイルズですが、独自の視点で価値と価値観を生み出しています。スマイルズの事業のつくり方の視点は、「Smiles or Not(スマイルズかそれ以外か)」。既存の考え方をある意味裏切る必要があるといいます。センス(価値観への共感)→実業(ビジネス上の価値)→本質(社会的意義=事業の価値)の順番でクリエイティブを構築していくことが大切だと野崎さん。

講義3

続いて価値観への共感について掘り下げていきます。「昔はEFFICIENCY(効率性とコスパ)、今はBRAND(付加価値と期待値)、そして未来はNARRATIVE(共感と自分事)というように、事業価値のコアポイントに変化が起きています。」野崎さんは『ひとりの女性の「ふーふー」から。』というイメージからブランドを形づくってきたSoup Stock Tokyoを例に、共感をキーワードに顧客との関係性を創造したというエピソードを話してくださいました。

講義4

共感を生み出す4つのポイントとして『文脈をつくる』『はじまりはいつもN=1』『CONCEPT<IMAGE』『関係性のブランディング』、また3つのキーワードとして『傾聴<想い』『主義<嗜好(スキ)』『正しさ<自分事』を挙げられました。「傾聴するよりまず自分の想いを伝え、自分はこれがスキだといった感覚を大切にすること。そして一般的な正しさというより自分に準えた自分事として物事を捉えると共感を生むブランディングに繋がっていきます。」

第2部:ワークショップ「電柱をリブランディングせよ!」

ワークショップ1

後半はワークショップを行います。今回のお題は『電柱をリブランディングせよ!』です。景観がよくないからと地中に設置している国もあるなか、電柱を皆に愛される存在へとリブランディングするアイデアをチームで考えます。果たしてどのような提案が出てくるのでしょうか。

ワークショップ2

それでは発表に移ります。まずはじめのチームは電柱に『伝言柱』という名前を付けました。災害時にはその地域の避難経路を示してくれる役割を持ち、普段は地域の子供たちの絵を貼ることで親しみを与えてくれます。次のチームが発表したのは、『電柱の擬人化』です。電柱に服を着せたり名前を付けたり、時には街の店とコラボすることでアイデンティティを持たせ、人々がそれぞれの推し電柱を見つけられるような魅力的な存在に変えるという提案をしました。

ワークショップ3

まだまだ発表は続きます。次のチームは『充電柱、休憩柱』というアイデアを考案。スマホを充電でき、電柱の影で休憩ができるような空間にするという案を発表してくれました。また、電柱をパワースポット化するというチームも登場。電柱を写真に撮り、その日の運勢を占うという電柱占いや、地域の偉人や有名人を祀るようなスポットにして、人が集う場所にするというアイデアを発表しました。

総評

最後に野崎さんからメッセージをいただきました。「デザインをする際に重要なポイントとして、既にデザインされているものを見るよりも、まだデザインされていないものを見ることが大事です。電柱のような、当たり前に存在して、誰も気にも留めていないもの、存在を疑っていないものに対して疑問を向ける。普段の生活の中で当たり前と思っているものほど、逆に目を配らせて見てみてください。また、自分が生きてきた中で獲得した情報は、外にはない100%ユニークデータですので、これらをいつでも引き出せるように意識しておくことも大切です。」野崎さん、本日はありがとうございました。