PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「コミュニケーションデザインと編集思考」

ダイナマイトブラザーズシンジゲート代表/アートディレクター/エディトリアルデザイナー

野口 孝仁 氏Takahito Noguchi

PROFILE
1999年、株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート設立。「ELLE JAPON」「装苑」「GQ JAPAN」「Harper’s BAZAAR日本版」「東京カレンダー」「FRaU」など人気雑誌のアートディレクション、デザインを手がける。現在はエディトリアルデザインで培った思考を活かし、老舗和菓子店やホテル、企業のブランディング、コンサルティングなど積極的に事業展開している。著書「THINK EDIT 編集思考」、(日経BP)TV出演「トップランナー」(NHK)。東京デザインプレックス研究所講師。

第1部:講義「コミュニケーションデザインと編集思考」

講義1

今回のプレックスプログラムの講師は、株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート代表の野口孝仁さんです。野口さんはこれまで、数多くの有名雑誌のアートディレクションを手掛け、さらに最近は様々な業種のブランディング・コンサルティングも行っています。本日は、そんな野口さんのご経験から得た「コミュニケーションデザインと編集思考」についてお話を伺います。

講義2

まずお話しいただいたのは、野口さんが「クリエイティブの中でも割とロジカルで職人ライクな技術が大切な職業」とおっしゃるエディトリアルデザインについてです。エディトリアルデザインのワークフローは、0.フォーマット作成 1.編集会議 2.デザイン入れ 3.デザイン提案 4.修正 5.入稿 6.色校 7.校了とプロセスを踏みます。野口さんはよく新入社員に「良いデザイナーになる前に良い職人になってほしい、宮大工のような仕事をしよう」と伝えているそうです。

講義3

「編集会議では、インタビュー力がアイディアの可能性を広げる」とおっしゃる野口さん。わからないことや曖昧なことなどを、勇気を持ってインタビューのように質問することで、デザインの方向性を明確にできるそうです。「デザインはジャンル問わず『視点の発見』。その人しか発見できないユニークな視点でどう価値をつくっていくかが重要です。日頃のインプット・アウトプット、毎日のストレッチのような積み重ねが大切になります」

講義4

雑誌は、掲載する広告などもすべて合わせて一本の映画を作るような気持ちで制作しているといいます。「読んでもらう人のことを考えたコミュニケーションデザインを意識しています。読者の年齢、性別、趣味、ライフスタイルなどを考えながら、文字や色を決めます。また、こちらが伝えたい内容と、読者に伝わる情報は必ずしも一致しないことも頭に入れておきます。」

講義5

続いて、雑誌づくりをブランディングに活かす「編集思考」についてお話しいただきます。野口さんの編集思考とは、雑誌の特集をつくるイメージで対象物の新しい価値を考え、それをサービス開発・ブランド開発にも活用する方法です。中には技術的な障害が発生することもありますが、ここで大事なのはやはり「視点の発見」だといいます。ありとあらゆる点(コンテンツ)を集めて編むことが編集なので、コンテンツを抽出して編み方を変えるだけで、新しい価値を生み出すことができます。

第2部:ワークショップ「編集思考でサービス開発しよう」

ワークショップ1

後半はワークショップです。まずは学生同士でペアになり、相手が喜びそうなギフトを考えます。次に、相手にインタビューをしながら、さらに喜びそうなギフトを考えます。最終的なギフトを決めたら、相手にギフトを発表し、お互いの感想をフィードバックします。そして最後に、これまでの過程を踏まえながら、ペアで新しいギフト本の企画を考えます。学生たちは短時間でアイディアを出すトレーニングをしていきます。

ワークショップ2

相手に考えてもらったギフトを学生に紹介していただきました。シュノーケル・地下神殿・廃墟が好きという学生は、「ダイビングの資格を取り、その後好きなところに潜りにいけるプラン」をプレゼントされました。好きなことが多いため、さまざまな好きを体験できるプランを考えてもらったとのこと。ポイントをまとめて、喜んでもらえるようにプランとしてまとめたところに編集思考を感じます。

総評

最後に総評をいただきます。「アイディアをつくる上で大事なことは、その方法をたくさん持つことです。それには相手の脳みそを覗くことが効果的で、アイディアに困ったときには世の中の人がどう考えているかを想像してみてください。すぐにはできるようになりませんが、意識的にやってみることで自分のクリエイティブワークの地図がつくれると思いますので、皆さん頑張ってください。」