PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザインと地方創生」

nottuo株式会社代表

鈴木 宏平 氏Kouhei Suzuki

PROFILE
武蔵野美術大学建築学科卒。在学中よりデザインユニットの活動を始め、プーマとのコラボプロジェクトを手掛けるなどを経て独立。東京でプロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、Webデザイナーを経て、2011年より岡山県・西粟倉村に拠点を移しブランディングデザインを開始する。DFA Design for Asia Awards(香港)、GOOD DESIGN AWARD(日本)、iF DESIGN AWARD2023(ドイツ)、TOPAWARDS ASIA 2023(日本)など受賞。

第1部:講義「デザインと地方創生」

講義1

今回のプレックスプログラムの講師は、nottuo株式会社代表の鈴木宏平さんです。nottuoは、岡山の西粟倉村という人口1,400人ほどの村を拠点にブランドデザインを行っているデザインファームです。鈴木さんは建築学科を卒業後、フリーランスとしてデザインの仕事を始められました。「デザイナーには資格がありません。デザイン企業に務めたことがなくても、自分でデザイナーと名乗った瞬間にあなたもデザイナーです」と鈴木さん。

講義2

フリーランスという形でプーマやLVMHなどのクライアントと仕事をしていた鈴木さんは、プロダクトデザイン・グラフィックデザイン・ウェブデザインなど色々なジャンルのデザインを経験。それが地方で仕事をするための大きな強みになったといいます。「地方では、デザインというワードにピンとくる人が都会ほど多くはないのですが、地方こそデザインが必要だと考えています。」

講義3

nottuoは、地方の中小企業における「デザイン経営」の外部パートナーとして、ブランディングの企画考案からツール開発まで必要な全てをデザインしています。「地方は仕事がないと言われることもありますが、そんなことはありません。ビジネスとしてしっかりと結果を残すことで次の仕事に繋がります」と鈴木さん。さらに、リアルな店舗を持つことが住民の具体的な認知へと繋がりやすいとして、ショップやショールームの運営も行っているそうです。

質疑応答1

質疑応答の時間では、「なぜ拠点を岡山県西粟倉村にしたのか?」という質問が。西粟倉村に移住した他のベンチャー企業が作成したWebサイトがとても印象的だったことから、村のデザインリテラシーを感じたことが大きかったと鈴木さん。これがフックの一つとなり、西粟倉村で会社を立ち上げることを決意されたそうです。そして現在、西粟倉村にはデザイン企業が7社ある状況にまでなっているそうです。

質疑応答2

続いては、「移住先でどのように人脈をつくり仕事をつくっていったのですか?」という質問です。「営業をかけても仕事は取れませんでした。結局は人付き合いが大切で、村で出会った人との交流がキーになりました。地元で知られている企業と仕事をしたことで、周りから信用されるようになり、また次の仕事に繋がるといった連鎖が生まれました。」

第2部:ワークショップ「日本の里山をリデザインする」

ワークショップ1

後半はワークショップを行います。今回のお題は「日本の里山をリデザインする」です。西粟倉村にある12の行政区のなかでも、特に戸数が少なく高齢化が進んでいる知社地区を舞台に、人を惹きつけるコンテンツを作成していきます。学生はチームに分かれ、人を集める施策(ブランドや商業施設、観光スポットなど)を考案していきます。

ワークショップ2

学生の考えたアイデアを紹介します。まず最初は、人気ゲーム「どうぶつの森」をモチーフとした子供向けツーリズム案です。独自通貨を発行し、ゲームに準えた釣りやDIY、住民との交流等の移住体験を提供します。対象者を子供に設定した点が評価ポイントとなりました。次のアイデアは、「知社地区を愛の聖域に」をコンセプトにした提案です。プロポーズを行うカップルや結婚記念日を控えた夫婦を対象に、大自然の中での特別な時間を提供します。もしプロポーズに失敗しても、地元の人に励ましてもらえるというオチまでついた面白い案となりました。プロポーズというピンポイントかつニッチな戦略を鈴木さんに評価していただきました。

総評

最後に、鈴木さんからも西粟倉村知社地区開発のブランドストーリーについてお話しいただきました。「『半径1kmの風景をつくる』をビジョンに掲げ、蒼々とした空、目に飛び込む輝く緑など、里山風景をしっかりと守っていきたいです。地元の方々が積み上げてきたものを、資本主義に搾取されず持続可能な発展に向かっていけるように発信していく。審美眼・美意識を生かし、しっかり価値を伝えていく。そんな未来を描いています。」鈴木さん本日はありがとうございました。