PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「建築的思考から生み出す、モノ、空間、風景Ⅳ」

トラフ建築設計事務所代表

鈴野 浩一 氏Koichi Suzuno

PROFILE
禿真哉(かむろ しんや)と共に2004年にトラフ建築設計事務所設立。建築の設計をはじめ、ショップのインテリアデザイン、展覧会の会場構成、プロダクトデザイン、空間インスタレーションやムービー制作への参加など多岐に渡り、建築的な思考をベースに取り組んでいる。主な作品に「テンプレート イン クラスカ」「NIKE1LOVE」「ブーリアン」「港北の住宅」「空気の器」など。「光の織機(Canon Milano Salone2011)」は、会期中の最も優れた展示としてエリータデザインアワード最優秀賞に選出。2011年「空気の器の本」、作品集「TORAFUARCHITECTS 2004 -2011 トラフ建築設計事務所のアイデアとプロセス」 (ともに美術出版社)、2012年絵本「トラフの小さな都市計画」 (平凡社)、2016 年「トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト」(TOTO出版)を刊行。2023 年iF DESIGN AWARD受賞。

第1部:講義「建築的思考から生み出す、モノ、空間、風景Ⅳ」

講義1

今回はトラフ建築設計事務所の鈴野さんにお越しいただきました。6年ぶり4回目のご登壇となる鈴野さんですが、これまで数々の空間に携わり、その特徴は「さまざまな領域を横断するデザイン」です。まずは2016年に実施された「トラフ展 インサイド・アウト」の映像を見ながら、これまでの足跡を振り返っていただきました。

講義2

初めて住宅を担当されたという「港北の家」は、自然の光を取り入れるため、空に向かってニョキニョキと伸びたような形をした住宅です。建築とインテリアに加え、時間をどのように空間に取り入れるかを考えた結果、このような個性的な住宅が誕生したとのこと。また「結婚指輪のデザイン」にも、建築と同様に時間を取り込む工夫が。ゴールドの指輪にシルバーのメッキを施し、経年劣化の過程でゴールドが見えてくるという建築家ならではの視点が組み込まれています。

講義3

「空気の器」は、紙に入った切り込みを広げることで器に変化するプロダクトです。花を入れることで花瓶になり、ワインボトルを包むことでラッピングにもなります。1枚の紙をどのようにして3Dプロダクトにするか、考える工程がとても楽しかったという鈴野さん。「家具をデザインする時は建築のように、建築をデザインする時は家具のように、という感じで、いつもちょっと思考をブラしながら企画を考えています。」

講義4

建築的思考や人の心理を活用した「WORLD CUP2006」は、サッカーのコートラインを変えることで創造的なコミュニケーションが生まれるユニークな事例です。新たなルールをも作り出す、鈴野さんの思考の柔軟性が伝わります。最後は、東日本大震災後の都市計画の一環で行った企画「石巻工房」を、当時の写真とともに解説いただきました。受講生たちもデザインで何ができるのか、各々真剣に問いを立てているようでした。

第2部:ワークショップ「トラフさんの気になる事例を鈴野さんに質問をしよう!」

ワークショップ1

今回のワークショップは、鈴野さんへの質問大会になりました。受講生たちは事前にトラフ建築設計事務所のWebサイトや作品などを見て、鈴野さんに聞いてみたいことを提出していました。そこから質問をピックアップしつつ、さらにそこで出た疑問は自由に挙手をしながら質問をさせていただく時間です。完全対話型のワークショップ、楽しみです!

ワークショップ2

受講生の質問と鈴野さんの答えをいくつか紹介します。Q.普段の日常生活で意識して考えていることは?→街中で気になる物があった際、自分が小さくなってそれを見たらどう思うか、上下逆転してみたらどう見えるか、など視点を変えて見る(感じる)妄想をしている。Q.空間における機能性とデザインのバランスがとても難しいのですが、鈴野さんのモノづくりの順番が気になります。→その空間に置かれるモノや敷地からインスピレーションを得てデザインをキャッチしている。(Aesopの店舗設計を例に説明していただきました)

ワークショップ3

Q.学生時代に鈴野さんが影響を受けた空間はありますか?→海外建築を見る機会を作り、コルビュジェの建築や、スイスのテルメ・ヴァルスというスパも影響を受けた。また、オーストラリアで1年過ごした事で自分を俯瞰的に見られるようになった。Q.鈴野さんが考えたイメージが空間という形になるまでの工程が知りたいです。→形にしてくれるのは優秀な施工者なので、チームで想いとイメージが共有できるようにCGや模型で伝える。アイデアの熱量を伝えることも大切。

総評

最後に総評をいただきました。「お仕事や学業と並行して学びに来られている方が多いと思いますので、こうして集まって良い出会いを築くことはとても大切です。築いたコネクションをしっかり活用して将来に活かしてください。」本日はたくさんの質問に対して事例を交えつつ丁寧に回答していただきました。鈴野さん、ありがとうございました。