PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「可能性の余白を持たせるデザイン思考」

PRETEND Prints & Co.代表 アートディレクター

神戸 太郎 氏Taro Kambe

PROFILE
デザイン会社「PRETEND Prints & Co.」代表。雑誌「POPEYE」のアートディレクションをはじめ、ファッションブランド「BEAMS」「THE NORTH FACE」「URBAN RESEARCH」のカタログやルックブック、企業のロゴデザインなど幅広く手掛ける。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「可能性の余白を持たせるデザイン思考」

講義1

本日のプレックスプログラムは、PRETEND Prints & Co.代表・アートディレクターの神戸太郎さんをお迎えします。雑誌『POPEYE』のアートディレクションのほか、ファッションカタログ、Web、企業のロゴデザインなど幅広く活躍されています。20代の多くの時間を過ごしたというアメリカでは、様々なカルチャーに触れながら独学で楽曲やZINE制作に励んでいたそうです。そして本格的にデザインの勉強を始めたのは、帰国後の30歳からなのだとか。そんな神戸さんから、アメリカで独自に吸収したファッションや音楽カルチャーの背景が垣間見るお仕事についてお話しいただきます。

講義2

まずは実際のお仕事の事例をご紹介いただきます。『THE NORTH FACE』のLP制作では、新商品を4つのカテゴリ(マウンテン・ライフスタイル・アーバンエクスプローラーズ・アスレチック)に分けて紹介してほしいという依頼があったそうです。神戸さんが考案したのは、空間と生活様式をテーマに4カテゴリそれぞれの部屋を作り、その空間にアイテムを配置し撮影するというもの。さらに、4カテゴリの部屋をターンテーブルのように回して魅せる方法を提案しました。クライアントがある程度の余白を持って想像できるようにするため、提案する際のラフ画はあえて綺麗に書きすぎないようにする点もポイントだそうです。

講義3

イメージを伝える際に大事な要素は、参照画像やラフであるとおっしゃる神戸さん。『BEAMS』のファッションカタログ制作では、希望するライティングや撮影方法をスムーズに伝える為、様々な参照画像を用いたそうです。また、多種多様なタイプの撮影方法を織り交ぜるのも神戸さんの一つの手法なのだとか。「サンプリングはとても重要ですが、それと同じものを作っても意味がありません。古いものを解体してまた新しいものにするという循環をしていくのがサンプリングの良いところでもあり、面白いところでもあると思います。」

講義4

DJ経験のある神戸さんならではの発言も。サンプリングしたものは、DJをするようにプレイ(編集)することもあるといいます。「DJのプレイ中は、オーディエンスを驚かせたり、トレンドに沿った表現が重要です。これがサンプリングを用いて企画することに近いと感じています。」最近の音楽シーンにおいても、K-POPがトレンドのビートを使用したり、曲のテーマに合わせたギリシャ神話の絵画をサンプリングしたMVが制作されるなど、多くの部分にクリエイティブを感じるのだとか。同じフォーマットでもどのように表現するのかが重要なのだと神戸さんは言います。

第2部:ワークショップ「ドイツのスーツケースメーカー『リモワ』を紹介する雑誌の1企画を制作してみよう」

ワークショップ1

後半は、ドイツ生まれの老舗ブランド『リモワ』のスーツケースを紹介する雑誌の企画について、グループで話し合いを行います。4ページの中に、写真もしくはラフイラストとタイトルを設置し、軽量且つコンパクトで機内持ち込み可能なスーツケースの魅力を紹介します。今回はサンプリングがメインとなる課題のため、雑誌や本などの多くのサンプルを神戸さんが持ってきてくださいました。学生たちはどのようなサンプルを選び、それをどのようなアイデアに昇華するのでしょうか。

ワークショップ2

出張で利用することをイメージして『私を運んでくれるパートナー』というタイトルをつけたグループは、最近のトレンドの“ミニマリスト”の身軽さとリモワのスーツケースの軽量さを掛けたアイデアを考案しました。1・2ページ目は、スーツケースが印象的に見えるよう大きな写真で表現し、3・4ページ目は、荷造りや空港でスーツケースを運んでいるシーンなどの利用シーンごとに4分割の写真で構成しました。「大胆にサンプリングできていて良かったです。今回の趣旨がよく理解できているなと感じました」と評価をいただきました。

ワークショップ3

『リモアキャビンコレクション』というタイトルをつけたグループは、飛行機を降りた後にある荷物受取のバゲージ・クレームで回っているスーツケースの様子を、コレクションのランウェイに見立てました。また、後半のページには1つの大きな被写体が映る写真をサンプリングし、スーツケースの商品概要をシンプルにテキストで書くというアート感を重視したデザインに仕上げました。「荷物受取所の様子とファッションショーのランウェイの感じが上手に掛け合わせて表現できているのと、サンプリングが感じられて良かったです」とコメントをいただきました。

総評

最後に神戸さんからメッセージをいただきました。「ネット上にある情報だけに頼ると、そのサンプリングのネタ元にそのままアイデアが寄ってしまいます。なので日頃から様々な本や雑誌からアイデアをインプットするように心がけてみてください。ビジュアルが良かった本をもう一度改めて見直すこともお勧めです。その時々で印象が変わることもあるので、より一層アイデアが広がると思います。」神戸さん本日はありがとうございました。