テーマ:「クリエイティブを武器に働こう」
&Co.代表
横石 崇 氏Takashi Yokoishi
- PROFILE
- 1978年生まれ。大阪府出身。多摩美術大学卒。日本初のクリエイティブエージェンシー「TUGBOAT」グループにおいて役員を歴任。2016年に&Co.,Ltd設立。国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」代表。テレビ局・雑誌社・ポータルサイトをはじめとするメディアサービス開発を手がけるほか、企業の組織開発や人材育成など、さまざまな場の編集に携わる。「六本木未来大学」講師を務めるなど年間100以上の講演やセミナーを実施。鎌倉にオープンしたコレクティブオフィス「北条SANCI」のプロデュースおよび支配人。編著に「これからの僕らの働き方 〜次世代のスタンダードを創る10人に聞く〜」(早川書房)がある。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。
第1部:講義「クリエイティブを武器に働こう」
講義1
今回のプレックスプログラムは4回目のご登壇となる&Co.代表・プロジェクトプロデューサーの横石崇さんを講師にお迎えしております。横石さんは、企業の組織開発や人材育成のお仕事の他にも、クリエイターのためのキャリアコーチングや働き方の祭典「Tokyo WorkDesign Week」 の主催もされる等、「クリエイティブと働き方」の領域でご活躍されています。本日はクリエイティブとキャリアをテーマに、ワークショップを交えながら講義をしていただきます。「キャリアには正解はないですが、ひとりで考えるのが難しいものでもあるので、ここにいるメンバーで話していければいいかなと思います。」
講義2
学生は事前課題として作成したキャリアチャートを使って、周りの人と自己紹介を行います。浮き沈みを時系列で表したチャートは起伏の大きさも回数も学生によって様々でした。横石さんは、「自己紹介では肩書きや得意なことだけを話してしまいますが、その人のマイナスの部分にこそ、キャリア形成にもチーム形成のためにも大事な部分が眠っている」と話されます。弱さを見せられる組織はパフォーマンスが出せるという研究結果も出ているそうです。「弱さも含めて言い合える、ケアをしあえる関係が想像以上のパフォーマンスを生み出します。暗黙知を通じて組織を強くしていきたいと思っています。」
講義3
続いて、学生たちはチャートの沈んだ部分から浮上した時に何があったか、「レジリエンス」について振り返ります。レジリエンスはマイナスからプラスに転じる力のことです。自分独自の方法があったり、レジリエンスが低い人だとなかなか戻れなかったりと、自分のレジリエンスのツボを知ることは今後の人生に役立つといいます。「会社に入ってからもずっとプラスでいられるわけではないので、自分のレジリエンスの戻し方を知っておくといいです。もし自分のマイナスについて面白く話せたら、共感を得て仲間ができたり、自分のクリエーションにも反映できます。マイナスを知っている人間は面白いんですよ。」と横石さん。
講義4
「プロフェッショナルの条件」は今日横石さんが、学生たちに1番伝えたいテーマでした。その条件とは、その人にしかできない仕事をやれているかどうか、レアキャラになりきれているかどうかだそうです。レアキャラの方程式は「100人いたら1番になれること」を3つ見つけて100万分のひとりになること。横石さんの場合は「クリエイティブ・人材開発・メディアのプロデューサー」だそうです。「自分の“100人にひとり“を見つけられるのは自分しかいません。自分で旗を立てるのがファーストステップだと思います。みなさんは社会人になってから新しいキャリアを志している人が多いので、もう山は1つもっていると思います。」
講義5
横石さんは3つの100分の1に加えて、「1万時間の法則」についてお話しされました。ある分野で天才と呼ばれる人は1万時間打ち込んでいるといいます。「僕はひとつずつ取り組みましたが、もちろん並行して取り組む人もいます。大切なのは熱中できるかどうかで、面白そうなことを見つけられているみなさんはラッキーです。」2つめのワークショップでは、学生たちは自分にハッシュタグをつけてキャラクター化をし、相手の記憶に残るための、仲間を見つけるためのキーワードを発見します。「このワークショップが難しい人は内省や対話の時間が足りていないので、ひとりで悩むよりはキャリアコーチを見つけてやってみるといいです。」
講義6(フリートーク)
後半はフリートークです。夢や目標がないことが、コンプレックスでも強みでもあると横石さんは話されます。エフェクチュエーション理論は、自分のできることを積み上げて、他者とコラボレーションしながら進んでいき、気づけばそこにいるという考え方で、ゴールを決めてステップを上っていくコーゼーションの考え方とは対極にあります。「目標があるからといって、幸せとは限りません。自分の冷蔵庫にある食材から美味しいご飯が作れるかという話です。僕は器用貧乏だし、今の仕事も様々なところから細かい仕事をもらうスタイルです。インターネットがある時代だからこそ、そういう考え方を肯定してもいいと思っています。」
講義7(フリートーク)
これから期待されるのは新しいデジタルの力を身につけた人だといいます。「これからのサービスは全ての入り口がスマートフォンになり、企業や行政の玄関としてのUIUXが必要とされる部分だと思っていて、何を学んでもユーザーファーストを考えられないと戦えません。」データサイエンスに偏りすぎず、感性価値を取り入れたUIUXでユーザの体験を設計することが広義の意味でのデザイナーの仕事になっていくというのが横石さんの展望です。その中で、感性の領域だけでなく、経営感覚やデータサイエンスの視点をもつ“エビデンスを出せる“デザイナーはこれからの時代に重宝されるというアドバイスをいただきました。
総評
最後に総評をいただきます。「デザイナーは自分の会社を持っておいた方がいいです。自分の作家性も担保できるのでクリエイションのストレスにならないし、経営にも詳しくなるからです。音楽業界をはじめとして、今は自分でなんでもできる人たちに仕事が流れています。そういう人たちとのやりとりはスピーディなんですよね。クリエイターは自分で作ることができるのが1番の特権です。それをフル活用して、YoutubeやBehancdなどのプラットフォームを戦略的に使っていくのが、上の世代に搾取されないクリエイターの戦い方だと思います。」横石さん、本日はありがとうございました!