テーマ:「つよい言葉、つなぐ言葉、つづく言葉。」
meet Inc.代表/コピーライター/クリエイティブディレクター
小藥 元 氏Gen Kogusuri
- PROFILE
- 1983年1月1日生まれ。早稲田大学高等学院-早稲田大学卒業後、2005年(株)博報堂入社後、2014年8月「meet&meet」設立。meet Inc.代表取締役。東京コピーライターズクラブ会員。これまでの主な仕事に、サントリーこくしぼりプレミアム「きょうは、幸福につかろう。」JEANS MATE「ジーンズは、まだ青い。」川崎市「Colors,Future!いろいろって、未来。」FamilyMart「Fun&Fresh」キレートレモン「なりたい人は、わたしの中にいる。」などのブランドスローガン開発。PARCO「PARCO_ya・パルコヤ」、モスバーガー×ミスタードーナツ「MOSDO!」、Pana Home「artim」、ポッカサッポロ「旅茶列島」シリーズなどのブランドネーミング開発がある。数多くの言葉を軸としたCI/VI 開発、コミュニケーション設計を手がける。Kis-My-Ft2「KISS&PEACE」作詞ほか。グッドデザイン賞2020受賞。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。
第1部:講義「つよい言葉、つなぐ言葉、つづく言葉。」
講義1
本日のプレックスプログラムは、今回で4回目のご登壇となるコピーライターの小藥元さんをお迎えしてお送りします。コピーとはデザインにとって切っても切れない関係で、コピーのないデザインというものは滅多にないのではないでしょうか。小藥さんの持っているテーマとして、コピーとは“ブランドの価値・人にとっての価値・ブランドに関わる人々・ブランドが目指すべき未来、以上の4つをつなぐ言葉”、というものがあるそうです。それを踏まえて、コピーがビジネスや人々にどのような影響を与えるのか、どれほどの力を持っているのかを講義していただきます。それでは小藥さん、よろしくお願いします。
講義2
そもそもコピーとはなんなのでしょうか。一般的にはただの広告のパーツと思われているかもしれませんが、それはコピーの役割の一つでしかありません。カレーと言うより「黒カレー」と名付ける、サバと言うのではなく「関サバ」と名付けることでそれがブランドになる。名前を変えるだけでも人々の興味を引き、買うきっかけを作ることができる。これは立派なコピーです。また、「肉山登山」という言葉があります。肉山という店に肉を食べに行くことを一般の方がそう名付け、SNSで広がった言葉です。広告として打ち出されていなくても、「じゃあ自分も登山してみようかな」と思わせる力を持った言葉、こちらも立派なコピーだと小藥さんは言います。
講義3
「同じことを言っているのに、そう言われると、違う景色が見えるもの。」「同じことを言っているのに、そう言われると、態度が変わるもの。」これがいいコピーだと小藥さんは考えています。野球業界に「甲斐キャノン」という言葉があります。ただ肩が強い選手と言われるところを「甲斐キャノン」と名付けることによって全然違った景色が見えるとともに、ニュースや新聞の見出しにも使われやすくなります。「100-1は、0です。」これは帝国ホテルが強いホスピタリティを表すために使ったコピーです。ただ丁寧に接客しますというよりも態度が違って見え、印象も強くなります。言葉の力で人とビジネスを動かす。それこそがコピーライターが目指すことなのです。
講義4
ここからは小藥さんご自身のお仕事と、その中で意識したことや学んだことをご紹介していただきました。クライアントと伝えるべき一般の方、それぞれを大事に考えること。コピーを作ることで人々を前向きにして、新しいビジネスを生み出せること。言葉でブランドの柱を作れること。写真を使う場合は、言葉と写真がセットになることによって違う景色と出会えること。これはコピーライターの醍醐味の一つなのだそうです。改めて”言葉”というものを学ぶ機会が少ない中で、小薬さんの講義はとても新鮮で目から鱗の内容でした。学生たちは今後作品を創る上で、とても参考になったのではないでしょうか。
第2部:ワークショップ「どうしても食べたくなるカレーの名前・キャッチコピー・ハッシュタグ」
ワークショップ1
後半はワークショップです。今回のお題は「飲食店が並ぶ道にある喫茶店でドリンク付き800円のカレーを見ました。それにしようかなと思ったのですが、違うお店でどうしても食べたくなるカレーを見つけました。1、その名前を教えてください。 2、それにキャッチコピーをつけてください。 3、人がつけるであろうハッシュタグは何か教えてください」です。「昼食は何を食べようか」これは日々直面する問題であり、本日ご紹介いただいたどの作例よりも学生たちに身近な題材です。事前課題として検討してきたものを各自小藥さんに提出しました。時間が少ない中での課題でしたが複数提出している学生もおり、講義に対する意欲が見受けられます。
ワークショップ2
「伝えたいことのベースは、やっぱりコピーはビジネスだと言うことです。それがあることでどっちが売り上げやお客さんを取れるのかということだと思います」ビジネスである以上、うまいことを言うだけでなく人に広がり、人が集まってくれるコピーを作らなければなりません。「ネーミングをするだけでなく、それに対してもっと人に刺さるためにコピーをどうしたらいいのか。今の時代はそれにどういう風にハッシュタグをつければいいのかも考えなければいけない」小藥さんは講義の中でもSNSの力について言及していました。共感を得ることでハッシュタグから広がっていくということも、今のコピーライターは考えなければならないのです。
ワークショップ3
提出された課題の中で、小藥さんが面白いと思ったものをいくつかご紹介いただきました。 名前「希望のカレー」 コピー”カレーの旅は終わらない。” 「コピーが面白いと思います。人の共感を取れるところで書いているのかな。作り手側も探求しているカレーの旅、食べる側もいろんなカレーを食べる旅みたいな、共感ポイントが高いコピーだと思います」 名前「煮干のダシが効きすぎたカレー」 コピー”すみません、入れすぎました。” ハッシュタグ”憎めないやつ” 「これは3つのポイントが高くて、絵が浮かびます。効きすぎたっていうのも面白い。商品化してもいいレベルで面白さをとっています。一回は試してみたくなる感じがしますね」
総評
最後に小藥さんから総評です。「コピーは皆さんの周りにあって、ただのネーミングもあればキャッチコピーもあり、更に今はハッシュタグもある。いろんな言葉がある中で世界観やブランドを作っていることが解っていただけたのかなと思います。だから面白いとも言えるし、だからこそ複雑だともいえる。”コピーはアイデア”だ、僕が14年やってきて解ったことです。商品を作ることはできないけど、アイデアで商品の価値を変えることができます。最後に皆さんにアドバイスをするとすれば、コピーを書こうとしない方がいいと思っています。書くのではなく、”つなぐ”という意識を持つと、コピーは変わります」小藥さん、本日は有難うございました!