PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「いきるアイデアⅡ」

電通 アートディレクター

えぐち りか 氏Rika Eguchi

PROFILE
アートディレクターとして働く傍ら、アーティストとして作品を発表。著書絵本「パンのおうさま」シリーズが小学館より日本と中国、台湾で発売。広告、アート、プロダクトなどの分野で活動中。主な仕事に、TOKYO2020パラリンピック閉会式、ARASHI EXHIBITION “JOURNEY”、SoftBank「5Gプロジェクト」「iPhone12 PRO」、再生素材を活用したランドセル「NuLAND」プロダクトデザイン、オルビス「DEFENCERA」、PEACH JOHN、PARCO、Laforet原宿、FUJIMI、RANDA、KOE、CHARA、木村カエラ等のアートワークなど。イギリスD&AD金賞、スパイクスアジア金賞、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞、JAGDA新人賞、JAGDA賞、ACC賞シルバー、ひとつぼ展グランプリ、岡本太郎現代芸術賞優秀賞、街の本屋が選んだ絵本大賞3位、LIBRO絵本大賞4位、受賞多数。青山学院大学総合文化政策学部えぐちりかラボ教員。多摩美術大学グラフィックデザイン学科非常勤教員。 HP: https://eguchirika.com instagram:https://www.instagram.com/eguchirika/

第1部:講義「いきるアイデア」

講義1

今回のプレックスプログラムは2回目のご登壇となります、アートディレクター/アーティストのえぐちりかさんにお越しいただきました。今回は特別に2日間に渡っての開催です。1/18の第1回目はえぐちさんが手掛けてこられた多くの作品を紹介していただきつつ、「いきるアイデア」をテーマにアイデアを生み出していく方法論についての講義となります。えぐちさんは電通でアートディレクターとして様々な作品を世に送り出すと同時に、アーティストとしても活動されています。この貴重な機会に多方面で活躍されているえぐちさんから「いきるアイデア」のエッセンスを学び取って欲しいと思います。

講義2

PEACH JOHNカタログ100号記念企画のアートディレクション、アパレルブランド「KOE」のディレクションなど、アートディレクターとしての制作において「クライアントからの要望をいかに楽しくシンボリックにしていく」ことを意識されているそうです。これら最近の作品から、大学時代に制作された「バーンブルックのたまご」の展示など、えぐちさんの歩みに沿って講義は進んでいきました。えぐちさんが制作を進める上で、最も大切にしている「アイデア」。ただの思いつきとは違う、いいアイデアには必ず「なるほど」があるとえぐちさんは語ります。

講義3

電通に入社してからの3年間は、企画がなかなか通らず作品が1度も世に出なかったそうです。挑戦しても報われない時代だったと語るその3年間は、社内のイベントポスターなど頼まれた小さな仕事でも一生懸命に取り組み、努力されていました。苦しい状況で積み重ねた努力がようやく実を結び、初めて自身の作品として世に出たサントリーの企業環境広告「なっちゃんがボスになった」では、一見すると新商品の宣伝かと思いきや、読むと環境広告と分かる「なるほど」が生まれる広告でした。えぐちさんはこの作品を契機に数多くの作品を手掛けていきます。

講義4

続いて、「目立つアイデアを考えたいなら他の人とは違う手法を考えることが大切。」ということで、えぐちさんの発想のキーワードについて実際のお仕事の話を交えながらレクチャーしていただきました。作品1つ1つの制作過程のエピソードにはえぐちさん自身が体験した感動や発見があり、その全てがかけがえのない宝物だということが伝わってきました。「アイデアとは、どんな仕事にも必要で、だれもが意識せずに考えていること。すべての物事をプラスに変える、いきる活力だと思います!」と締めくくり、1日目の講義は終了しました。

第2部:ワークショップ「不要になったもので新たな価値を作る」

ワークショップ1

講義の2日目は、前回から1週間後の1/25に行われました。1日目に発表された課題「不要になったものを利用して、人がお金を出してみたくなるような新しい価値を作る。」を学生たちは1週間の間で考え、作品を制作してきています。今回は、はじめにえぐちさんや参加者の前で1人ずつ発表していきます。その後お互いの作品を見て回り、気に入った作品にコメントをします。最後に各作品へえぐちさんから講評をいただきます。前回の講義を踏まえてどんな作品を用意してきたのでしょうか。発表を待つ学生たちも緊張している様子です。

ワークショップ2

発表が始まり、1人ずつ自身の作品をプレゼンしていきます。各自が選んだ「使わなくなったもの」も実に様々。しじみの殻を使ったスノードーム、古本を使った小物入れやコートを加工した世界地図、余った壁紙を使ってカードケースなどを実際に作った人も。中にはメッセージ性や複数の使い方が考えられたものまで表現の方法にもアイデアが光ります。プレゼンを終えて、各自の作品に対して気になった作品へコメントしていきます。「なるほど」と思うポイントがあったものには特に皆からの注目を集めていたようです。

ワークショップ3

発表した作品1つ1つにえぐちさんが「コンセプトがシンプルで「なるほど」に繋がりやすく良かった」「その素材ならではの部分をもっと詰めるとさらに納得感が出てきそう」と、具体的なポイントを挙げながら丁寧に講評されていました。そのものが持っている価値を最大限に使い、「なるほど」と思われる何かに変えられると人に伝わるアイデアになるとえぐちさんは語りました。お互いのコメントやえぐちさんからの講評を通して、学生たちは新しいアイデアの種を思いついたのではないでしょうか。

総評

最後にえぐちさんから総評をいただきました。「皆さん様々な要らないものを思いついたと思います。人が「なるほどね」と感じるものを見つけるにはどうしたらいいかを考えてみてください。なんでこのモチーフなのか、それが最大限に活きる表現は何か、それを導き出せると人から選ばれるものになる。そういうことを意識しながら、みんなからのアドバイスを読んで、新しいものを生み出すことへ繋げていって欲しいなと思います。」えぐちさん、2日に渡ってありがとうございました!