PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「UI/UX デザイン」

UI/UXデザイナー

高宮 修平 氏Shuhei Takamiya

PROFILE
かねてより、UI/UXデザインに携わり、現在はフィンテック関連のプロダクトUI/UX設計に携わる。また、テキスタイルデザインにも精通し、ロンドン芸術大学で非常勤講師を勤める。2007年に経済産業大臣賞を受賞する。東京デザインプレックス研究所 UI/UX専攻 主任講師

第1部:講義「UI/UXデザイン」

講義1

今回のプレックスプログラムは、昨今注目されているUI/UXの分野で活躍中のUI/UXデザイナー高宮修平さんにお越しいただきました。東京デザインプレックス研究所に新設されたUI/UX専攻の講師も務めています。初めてのご登壇となった本日の会場には多くの受講生が集まりました。やはり現在トレンドとなっているUI/UXというキーワードに興味がある受講生が多いことがうかがえます。また、大学でテキスタイルを学ばれていた先生がUI/UXの世界でいまは仕事をしているという異色の経歴にも注目しているようです。講義が始まり、まずは高宮さんの自己紹介です。

講義2

現在、高宮さんは金融系の情報設計を扱うお仕事をされています。具体的には会社での決算書の作成など、企業の経営に関わる収支を扱う際に使用されるアプリケーションの設計を行なっているとのこと。収支のお金の流れを自動化するしくみを設計するため、やってることはすごい堅い仕事です、と高宮さんは話します。実際に高宮さんが設計したアプリは、対企業のBtoB向けの製品のため、普段の生活とは少し遠い話のようですが、受講生の中で、勤め先で高宮さんの設計した製品を使っているという声も上がりました。次に、実際のUI/UXの講義に移ります。高宮さんから「モバイルの特性で欠かせないものとは?」と質問がありました。一般論として特性は次のように挙げられるそうです。

講義3

特性は「隙間時間に使える」「通知がすぐに受け取れる」「詳細確認、編集ができない」という3つです。これはモバイルアプリの設計にあたり常に意識しなくてはならない点であると確認します。次に、モバイルのソフトフェアの種類を例を挙げながら整理します。キュレーションアプリ、EC、ゲームやコミュニケーションツールなど、その中には高宮さんが普段扱う金融系のものもあります。このようなソフトウェア、プロダクトは人々の生活だけではなく自国の経済にはなくてはならないものです。「こういったサービスのプロダクトの設計に携われるスキルを習得してもらいたいなというのが今回専攻を立ち上げたいと思ったきっかけ」と、高宮さんは当校のUI/UX専攻設立についてもお話下さいました。

講義4

プロダクト設計について、高宮さんはお話を続けます。色や形といった目に見える要素も大切ですが、それ以前にプロダクトを設計する上ではまず「要件定義」が必要になります。「プロダクトの設計で必要な、情報設計はクリエイティブの世界とは違います。まずプロダクトのテーマや扱う範囲などがすでに決まっていて、その上でどのように要件を整理していくかが重要です。具体的にいうと、楽しくショッピングできる世界を実現したいなど、企画者の前提のようなものから、徐々に整理して設計が始まっていきます」と高宮さんは話します。最適なUI/UXを実現するための要件定義、その後の設計の間で必要な視点として、「人間中心設計」「行動経済学」「人間工学・感性工学」といったキーワードに高宮さんは触れていきます。一旦休憩を挟み、次はワークショップに移ります。

第2部:ワークショップ「UI/UXデザインに触れてみよう」

ワークショップ1

高宮さんが用意したワークショップは、UI/UXの考え方を実際に皆さんに体験してもらうワークショップです。今回は、高宮さんからいくつかUI/UXにまつわる問題を出題します。それをグループごとに話し合って解き、発表していく形式のワークショップです。使用する道具は、鉛筆と紙だけで十分とのこと。高宮さんから、問題を解く際の注意点を説明いただきました。「問題の答えを導く際に、まずは自分で仮説を立てて、だからこれが正しい答えなんじゃないか、という形で回答していってください」。前半の講義でもあったように、「なんとなくいいからこれにした」という説明は通用しません。早速ワークショップ開始です!

ワークショップ2

まずはじめに高宮さんから出された問題は、UIコンポーネントである「ボタン」にまつわる問題です。アプリでよく使われる「新規登録」のボタン、画面には同じ「新規登録」と書かれたボタンが3つ並んでいます。一番上のボタンは角がある通常の細い長方形の形、真ん中は角が少し丸みを帯びた形、一番下は真ん中のボタンよりさらに丸みが強まった形です。この3種類の中で一番最適な形のボタンはどれかを考えてもらいます。考える際に、ボタンが使われるアプリがどんなものかを想定し、その想定を前提条件とし、こういった前提が背景にあるからこのボタンが最適である、という理由づけもしてもらいます。

ワークショップ3

グループで話し合った後、皆さんに回答をしてもらいます。回答までの理由づけがうまくいかず苦戦する受講生もいましたが、前半の講義も踏まえ皆さん要件を整理しながら発表していました。高宮さんから答えを発表してもらいます。答えは真ん中のボタンでした。答えの理由を高宮さんからお話されました。「矩形(くけい)の違いに注目し、ボタンと認識できるかどうかを考えてもらいます。直線を見ると人は警戒心をもつという実証結果があります。まず曲線を使ってユーザーの警戒心をなくすこと、一方でボタンという矩形を保持する必要があるので、一番下の丸みが強いものも除外されます。このため、真ん中のボタンを選ぶのが正解となります。」デザインの要素である「形」、高宮さんのように論理的に説明があると受講生も納得の表情です。

総評

その他にも問題が出題され、アプリの設計に必要な知見を高宮さんからの解説を交え説明していきました。最後に、高宮さんから「みなさん(講義を終えて)どうでしたか?難しいトピックではあったと思いますが、UI/UXは今後必要としてくる企業や組織は多いです。スキルとして習得すれば、すごく汎用性高く活用することができます」今回のプログラムも様々な専攻・分野の生徒が多く参加しています。プログラムが終わった後、受講生からは「UI/UXについて無知な状態で参加しましたが、理解を深めることができました」と、UI/UXの分野にとても興味を持った様子です。高宮さん、本日は本当にありがとうございました!