PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「新三方よし」

kenma代表/ビジネスデザイナー

今井 裕平 氏Yuhei Imai

PROFILE
kenma 代表/ビジネスデザイナー。1981 年大阪府堺市生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科修了。安井建築設計事務所、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)を経て、電通コンサルティングに入社。シニアマネジャーとして企業の成長戦略にフォーカスしたコンサルタント業務に従事。在籍中にkenmaを設立し、2016年11月より代表取締役に就任。kenma では主に戦略パートを担当。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。https://www.kenma.co

第1部:講義「新三方よし」

講義1

本日のプレックスプログラムは、株式会社kenma代表の今井裕平さんにお越しいただきました。プレックスプログラムのご登壇は初となります。多くの参加者が集まった会場に、今井さんも驚いている様子でした。受講生たちも心待ちにしています。早速、講義がスタートです!今井さんの自己紹介と、今日までの経歴をまずお話くださいました。建築学科出身で、元々設計事務所で働いていた今井さんは、現在ブランディング、コンサルティングの分野で活躍されています。デザインで問題を解決したい、企業の価値を上げたいという思いで日々過ごしていると今井さんは話します。

講義2

今日の講義は、デザインでの問題解決をビジネスの立場からお話をされます。デザイナーを目指すために、作り手としてのスキルを学ぶ受講生にとって見落としがちな分野でもあります。だからこそ、自身に足りないと感じる受講生が今回多く参加しているようです。まず今井さんの意識として、何かある問題点を考える際、イシュー度を縦軸に、抽象度を横軸にして整理すると話します。その上で、デザインで何かインパクトを与えるにはイシュー度が高く、より具体的なものを取り上げる必要性を今井さんは話します。そのような考えを「FlagshipConsulting」と呼び、問題点を解決していくための方法として取り上げました。

講義3

その「Flagship Consulting」の事例をいくつか紹介してくださった後、話題を変え、改めて今井さんから受講生たちに伝えたいことを 「新三方よしワークショップ」話します。何か問題が起きている時というのは、2 者間でお互いが何か我慢していたり、片方が我慢していたりする状態で起きると今井さんは指摘しました。その上で、2 者だけで話を解決するのではなく、その間に入って3者関係で物事を進めていくと問題が解決しやすくなると話します。また、そうした3 者がWIN-WIN-WIN の関係になった時、とても強力になると今井さんは続けます。そうした3 者間がうまく機能し、互いにメリットが生まれる状態を今井さんは「新三方よし」と呼びました。

講義4

通常呼ばれる三方よしは「売り手よし・買い手よし・世間よし」というように、もともと商人から生まれた言葉でした。今井さんが挙げた「新三方よし」とは、「官よし・企業よし・生活者よし」という官民連携としてより社会に影響するような内容を目指すものです。それらの具体的な例も数多く紹介してくださいました。デザインで問題を解決する場合、新三方よしの中では「企業」としての立場で入りますが、スポンサーとして協賛することで、他では手に入らないユニークな権利を得られる等、慈善ではなくビジネスメリットを手に入れることが必要です。そのためには、何を協賛してほしいのかを明確にする、どんなインセンティブが設計できるかを考える、協賛してもらえる相手を考えることが大事と今井さんはお話されました。

第2部:ワークショップ「新三方よしワークショップ」

ワークショップ1

前半の講義が終わり、後半はワークショップを行います。今井さんの前半の講義を踏まえた上で、ワークショップでより理解を深めてもらいます。今回のテーマは、受講生に富士山のスポンサーとしてどんな協賛ができるか、プロジェクト案を考えてもらいます。スポンサーであり、かつデザイナーであるみなさんは、「富士山オフィシャルデザイナー」としての権利をもらう代わりに、富士山登山者の満足度が上がるようなデザインを提供するという設定です。対クライアントの二者間でアイデアを発表する機会とは異なった、第三者としての提案を考えてもらいます。

ワークショップ2

「新三方よし」に基づいて、富士山側も登山者側もメリットを得られることはもちろんですが、スポンサーにもメリットを最大限得られるような案を皆さん、考えることはできるのでしょうか。グループでの意見交換ののちに、早速案を発表してもらいます。まずはじめに発表したグループは、「富士山何合目 記念ポストカード」の案を発表しました。ただ、ポストカードを作るだけではなく、そのポストカードを使った体験などもプレゼンしていました。登山者がポストカードを集めたくなるような案に、会場の皆さんも感心しながら聞いていました。顧客も、運営も、メリットがある案ですが、ではスポンサーにとってのメリットは?今井さんからは、そこをもう少し詳しく聞きたいとコメントがありました。

ワークショップ3

続いては、リピーター獲得のためのポイント制度を考えたチームの発表です。ポイント制度とはいえ、こちらも思わず笑いが起きるほど、ユニークなアイデアが随所に散りばめられていました。また、「かわいい」「かっこいい」と登山者が思うようなゴミ袋の開発によって、ゴミ問題を解決したり、登山者が途中道に迷わないような工夫をされたアイデアだったり、各グループ様々な案が出されました。どれもデザインを生かした案でしたが、やはり今回のテーマは「新三方よし」とあるように、自身のメリットを明確にすることがみなさん難しかったようです。

総評

「スポンサーのメリットとして、『知ってもらう・認知してもらう』というところで止まってしまうのではなく、具体的に何を協賛してほしいのかを明確にする必要があります」と今井さんは話します。ビジネスである以上、具体的な利益を見据えた提案をする必要性と重要性を、このワークショップで受講生のみなさんも感じたようです。WIN-WIN-WIN の関係性をつくるために、どの立場でもハッピーになる仕組みを考える多くのヒントを今井さんは伝えてくださいました。コンサルティングの分野にとどまらず、デザインの分野でも考えていくべき思考方法を、受講生は今回で学んだでしょう。