テーマ:「男性編集者( 及び男性誌脳の編集者)が 女性誌編集長を務めることで見えてきた編集者という仕事」
マガジンハウス「Hanako」編集長
田島 朗 氏Ro Tajima
- PROFILE
- 1974年生まれ。1997年株式会社マガジンハウス入社。宣伝部を経て1998年『BRUTUS』配属。2010年『BRUTUS』副編集長、2016年『Hanako』編集長。BRUTUSでの主な担当編集は、「おいしい酒場」「お取り寄せ&手みやげ(2011~)」「うまい肉」「あんこ好き」「キャンプしようよ」「一世一代の旅、その先の絶景へ」「わざわざいきたくなるホテル」「男だってディズニー」「犬だって」「この本があれば、人生だいたい大丈夫」など。
第1部:講義「男性編集者( 及び男性誌脳の編集者)が女性誌編集長を務めることで見えてきた編集者という仕事」
講義1
本日はHanako編集長を務める田島朗さんにお越しいただきました。Hanakoといえば誰もが知る雑誌、多くの学生が集まった会場に田島さんも驚かれていました。今回のプログラムは「男性編集者(及び男性誌脳の編集者)が女性誌編集長を務めることで見えてきた編集者という仕事」というテーマで行われます。2016年10月からのHanakoリニューアルに伴い、新しく編集長に就任した田島さん、どのようにして心を掴む特集を生み出しているのでしょうか。
講義2
田島さんが講義冒頭に「実は、就職前にも雑誌を作っていたんです」と一言。それもなんと、小学生の頃に作っていたというから驚きです。小さい頃から自由帳を使い、そこに自分で考えた記事や特集などを書いていたそうです。最初は自分で全て考え雑誌を作った田島少年ですが、やはり全部を自分でつくることの限界を徐々に感じるようになります。それからは、友人に絵を描いてもらったり、場合によっては他のクラスの子に売り込みをして仲間になってもらったり、キャスティングして雑誌を作るようになります。当時「編集」という言葉は知らなかった田島さんですが、「この時から編集という仕事が面白いと感じていました。」と話します。
講義3
時は過ぎ、大学生になった田島さんは就職活動の時期に入ります。本当は世界各国を回る旅人になりたかった田島さんですが、周囲の反対により就職活動を続けます。そんな中ご縁があったのが、現在も働くマガジンハウス。編集の道へと突き進んでいきます。BRUTUS編集部に配属後、数々の特集を手がけたことで「BRUTUSが編集者としての人格をつくった」と田島さんは話します。特に、より多くの人に読んでもらうために重要なことは「どんな人にもうなづいてもらえるタイトル」とメッセージを強く伝えるビジュアル、つまり「表紙」であると、ブルータス時代に強く学んだと続けます。過去に手がけたブルータス特集を例に挙げ、タイトルの意味や表紙がどのように作られたかを教えて下さいました。
講義4
そして、田島さんはHanako編集長に就任します。創刊から30年の歴史をもつHanakoは、雑誌の目的も明確で、特集の幅もブルータスほどは広くありません。「だからこそ面白い」と考えた田島さんは、雑誌の性格は変えずにコンセプトを再定義します。ただ普通に暮らすのではないアクティブな女性像を意識した「東京を、おいしく生きる。」というキーコンセプトで、定番の自由が丘特集をはじめその他の特集も、デザインや写真の構図までこれまでのHanakoと変えていきます。東京生活を楽しむワンシーンが見える表紙、キャッチーなタイトル、雑誌は違えど、やっていることはBRUTUSとそう変わらないと田島さんは話します。「どんな突拍子もない企画も、逆にどんな普遍的な企画も、何万人にうなづいてもらえるタイトルがある表紙さえ決まれば、特別な企画になる。あとは、その内容を丁寧に、かつ軽やかにつくるだけです。」
第2部:ワークショップ「Hanako のタイトルと表紙ビジュアル案を考えてみよう」
ワークショップ1
前半の講義を終えて、後半はワークショップです。ワークショップのお題は、今のHanakoをイメージして、タイトルと表紙ビジュアル案、巻頭企画を2つ~3つ考えてプレゼンする、というものです。これは実際のHanako編集部でも行なわれており、思考訓練としても効果的な内容になっているのだとか。現場と同じ感覚で行われるこのワークショップに、学生たちもがぜん気合が入ります。20代後半~30代女性がターゲットの、「東京」と「食」を中心としたライフスタイル雑誌というコンセプトを押さえながら、Hanako読者をぐっと惹きつけるものを考えていきます。グループに分かれてディスカッションが始まりました。
ワークショップ2
ディスカッションが終わり、アイデアをまとめたら早速プレゼン開始です。まず最初にやりたいグループは?という声に、我先にと手を挙げて、みんな積極的です。まず初めに発表したグループの企画は、男性的なイメージが強い、ある食べ物を女子でも手軽に食べられるような企画を発表しました。女子が敬遠しそうな、いかにも男子!というイメージを払拭した表紙のビジュアルを作成しています。タイトルも語呂がよく、タイトルを読み上げた途端に会場から笑いがおき、つかみもバッチリのようです。田島さんも「いきなり変化球がきましたね」と楽しそうに発表を聞かれていました。
ワークショップ3
また、別のグループは現在のトレンドワードを盛り込んだタイトルと、女性の心をくすぐるような特集を企画していました。田島さんも絶賛されており「これはすごくいい特集ですね。トレンドのスパイスも効いており、かつそれでいて「~したい」という欲求も満たせるような内容です。発想の仕方もエディットされていて、いいと思います。」と嬉しいコメントを頂きました。また別のグループの発表でも興味深い内容の発表があり、「8月の特集がまだ決まっていないので…この企画、もう少し詰めたらいけちゃうんじゃないかな…。」と田島さんから思わず本音が!?もしかしたら、ここでのプレゼンがHanakoの特集を飾るのも夢ではないかもしれません。学生たちも大盛り上がりです。
総評
最後に、田島さんより今回のプログラムを終えてコメントをいただきました。「今日1日、皆さんがHanakoのことを考えてくれたということが、まずなにより嬉しかったです。プレゼンで上がったものも、すぐ特集になりそうなものもあり、みなさんの発想が面白いなという印象を受けました。エディター志望ではないのに、そこまで発想できるのは皆さんデザイナー志望の方たちはさすがだなと思います。たとえ編集の仕事をしていなくても、今回やった内容はいろんな場面で必要になってくる発想の訓練となるものです。この時間が皆さんにとって有意義な時間になったことを祈ります。」