PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「デザイナーのプレゼンテーション」

アートディレクター

千原 徹也 氏Tetsuya Chihara

PROFILE
1975年京都府生まれ。デザインオフィス「株式会社れもんらいふ」代表。広告、ファッションブランディング、CDジャケット、装丁、雑誌エディトリアル、WEB、映像など、デザインするジャンルは様々。近作では、桑田佳祐アルバム「がらくた」のアートディレクション、関ジャニ∞アルバム「ジャム」のアートディレクション、ウンナナクールのブランディング、小泉今日子の35周年ベストアルバム、装苑の表紙、NHKガッテン!ロゴ、adidas Originalsの店舗などが知られている。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:トークショー「デザイナーのプレゼンテーション」

講義1

今回のプレックスプログラムは、れもんらいふ代表の千原徹也さんにお越し頂きました。千原さんは今回で4回目のご登壇で、講義は約1年半ぶり。今回の講義に参加した受講生は、1年半前以降に入学した生徒さんがほとんどでしたが、千原さんの人気はやはり健在。今回も大勢の受講生が参加しました。冒頭「前回と同じ話はしません!」と宣言した千原さん。今回はどんな講義を繰り広げるのでしょうか?大勢の受講生の期待が高まる中、講義は始まります。

講義2

「今日は実際に企業にプレゼンしたときのプレゼンシートを持ってきました。」の一言に、どよめく会場。なんと千原さんは今回の講義で、実際にプレゼンテーションで使用したシートを、受講生に公開してくれるそうです。実際の現場の資料を見れることは、受講生にとっては大変貴重なことです。受講生も目を輝かせながらスライドに釘付けになっています。千原さんの最近のお仕事事例の紹介も合わせながら、数々の案件のプレゼンシートを見せていきました。複数案提示するまでのアイディアの出し方、シートの見せ方、プレゼンテーションの方法までお話しくださり、これからデザイナーを志す受講生たちにとっても大変有意義な時間が過ぎていきます。

講義3

次に、千原さんの事務所「れもんらいふ」の方針や千原さん自身の考え方について触れられました。「れもんらいふは、いろんなことをやっている。」この言葉通り、グラフィックデザインにとどまらず音楽フェス、塾、ラジオなど、さまざまな活動をされています。「デザイナーとしてやらなくてもいいことをやってます」と話す千原さん。日本のデザイン業界のセオリーとして、アートディレクターとして活躍した後はADC賞を獲得し・・・そんないわゆる王道の道筋はもうやらないと決めたと話す千原さんは、肩書きだけではない「オンリーワン」であることの大切さを伝えました。他の誰もやっていないことを探すこと、グラフィックデザインをベースにしながらそれ以外をやっていくことの重要性に、受講生も感銘を受けていました。

講義4

また、デザイナーを取り巻くシビアな現状についても話されました。「デザイナーなんて儲かんないよ!というトークをしてみたいですね。」と笑う千原さん。デザインの依頼に対して、提示された金額が想定とは違うことがあることもしばしばという現状。これに対し「グラフィックデザインが安易に出来ると思われることも稀にはあるけど、実際は全く違います。グラフィックデザインが大変な仕事で、価値あるものという認知を広げていきたい。デザインによって世の中が変わったり、デザインというものに対しての評価基準をもっと上げていかないといけないと思います。」と話します。デザインの価値を引き上げるために、常に戦っている千原さんの強い思いを感じる講義となりました。

第2部:ワークショップ「映画のパンフレットのデザイン」

ワークショップ1

第2部のワークショップは、千原さんが実際に抱えている案件を扱います。その案件はこれから公開予定の映画のパンフレットのデザインです。映画の予告編や情報を確認した後、グループごとにパンフレットデザイン案を考えてもらいます。「このワークショップで、パンフレットの新しい形を提案してください!」と、千原さんからの呼びかけに受講生たちも気合が入ります。早速グループごとにディスカッションスタート!いったいどんなアイディアが出てくるのでしょうか?

ワークショップ2

映画の主人公はパパラッチのフリーカメラマン、芸能週刊誌の編集部とのやりとりが交わされる舞台を「パンフレット」という形に落とし込むために、活発な議論を交わしています。パンフレットといえば、映画を見た後に買う人もいれば、前に買う人もいます。映画を観る人たちが手にするシチュエーションや、パンフレットを手に取って観るときの気持ちなど想像をしながら、みんなの意見をまとめ、いよいよ各グループの発表の時間となりました。パンフレットを週刊誌そっくりに作ったらどうか?また別のグループはパンフレットをカメラのフィルムで表現したらどうか?各グループの発表が続きます。

ワークショップ3

週刊誌そっくりに作ったらという案に対して、「パンフレットに袋とじがあると面白いよね」とコメントする千原さん。それぞれのグループごとの発表に対していい点を引き出してくださいます。各グループのアイディアは、カメラを生かしたデザインか、週刊誌に似せたデザインかで別れた印象でした。発表の順番が後のグループの発表者は「先に発表したグループにアイディアを言われてしまいましたが・・・。」とちょっとやりずらそうな様子。ただ、そんな中でもプレゼンの仕方を工夫したり、会場の笑いを誘ったり、各グループのプレゼンには熱が感じられました。途中、千原さんも「これ、1案絶対いれたいよね!」と、プレゼン中盛り上がる場面も。ひょっとしたらここでのアイディアが世にでるかも!?そんな期待感が持てる各グループの発表でした。

総評

千原さんから最後に、講義を受けている受講生に向けてメッセージをくださいました。「自分がデザイナーとなり、自分の会社を立ち上げるまでには色んな経緯はありますが、一言で言うと『楽しんでやってたらこうなってた』という感じですね。グラフィックデザイナーは下積みがどうしても必要な職業。最初から活躍できる仕事ではないから、途中でやめてしまう人が多いんです。続けるにしろ基本的にしんどい仕事です。しんどいなら、もう逆に楽しむしかない。真面目に考えて悩んでしまうと抜け道がなくなってしまうので、考えすぎず楽しむこと。楽しくやる人には周りに人が集まり、いいことが増えてきます。とにかく楽しい人になってほしいな。」千原さん、本日も貴重なお話ありがとうございました!