テーマ:「『スペースコンポーズ』という仕事 〜人を惹きつけるコミュニケーションデザインとは〜」
スペースコンポーザー
谷川 じゅんじ 氏Junji Tanigawa
- PROFILE
- スペースコンポーザー。JTQ株式会社代表。1965年生まれ。2002年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。“空間をメディアにしたメッセージの伝達”をテーマに、さまざまなイベント・商空間開発・都市活性化事業・地方活性化プログラム・企業ブランディング等を手掛ける。独自の空間開発メソッド「スペースコンポーズ」を提唱、環境と状況の組み合わせによるエクスペリエンスデザインは多方面から注目を集めている。主なプロジェクトとしてパリルーブル宮装飾美術館 Kansei展、平城遷都1300年祭記念薬師寺ひかり絵巻、NIKE WHITE DUNK、YOHJI YAMAMOTO BRANDING、GINZA SIXグランドオープニングセレモニー、東京ミッドタウン日比谷LEXUS meets…“HIBIYA” など。現在、 一般社団法人Media Ambition Tokyo代表理事を務める。
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第1部:講義「スペースコンポーズという仕事〜人を惹きつけるコミュニケーションデザインとは〜」
講義1
本日のプレックスプログラムは、JTQ代表の谷川じゅんじさんをお迎えしました。谷川さんの肩書きである「スペースコンポーザー」は、私たちにとって普段聞きなれない職業。それもそのはず、この職業は谷川さん自らが新たに生み出し名付けられたものだからです。自身のデザインスタンスを表す「スペースコンポーズ」という概念を提唱する谷川さん、これからの講義に学生の期待が高まります。
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講義2
まずは谷川さんの経歴からお話していただきました。大学時代のお話から始まり、現在のJTQを立ち上げた経緯まで、「普段ここまで話さない」と谷川さん自身もおっしゃったほど、細かく丁寧にお話してくださいました。その中で谷川さんがキーワードとしてあげたのは「ホスピタリティー」。まだその言葉が存在しなかった1980年代にすでに、谷川さんは仕事を通じて強く感じたそうです。
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講義3
経歴の後は、いよいよ「スペースコンポーズとは?」という問いに対して、谷川さんのデザインの核に触れながら話は進みます。「Conceptdesign(コンセプトデザイン)」「Spatialdesign(空間デザイン)」「Experimentaldesign(体験デザイン)」をつなぎ合わせ、全体の「Brandingdesign(ブランディングデザイン)」を、谷川さんが取り組んでいることと絡めて語ります。その空間、場にいることで得た体験が、記憶に残り、「また来たい」とリピートさせる、そのサイクルを生み出すために「空間」と「体験」を行き来しながら考えることの重要性を明示しました。
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講義4
さらに、空間は情報を伝えるためのデバイスであり、メディアの機能を持っていると話します。その空間の中で体験すること、あるいはその空間までにたどり着くまでの道のりや街の風景、その体験後の記憶や帰り道などが連鎖して一つの価値が生まれることを谷川さんはコンテキスト(文脈)として重要視しています。これらのその人がもつ印象と記憶の連鎖によってブランドの価値が決まるため、価値を決めるのは結局人である、と続けます。「体験価値のデザイン化」と呼べる谷川さんのデザインスタンスの概要と詳細を、数多くの作品を交えながら紹介し、第1部は終了しました。
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第2部:ワークショップ「ジャパン・ハウスにおける巡回企画展の企画」
ワークショップ1
第2部のワークショップの題材は、第1部にて話題に触れた国家プロジェクトである「ジャパン・ハウス」です。各グループに分かれ、ジャパン・ハウス内で行う企画をグループ内でそれぞれ考え発表を行うものでした。グループでのディスカッションに40分、そしてプレゼンは4分という制限の中で企画を発表してもらいます。限られた時間の中で、各グループはまとめることができるでしょうか?
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ワークショップ2
40分間、どのグループも活発に議論が行われたのち、いよいよプレゼンタイムに入ります。ジャパン・ハウスの企画ということで、それぞれのグループが「日本らしさとは何か」という問いに答えるようなプレゼンとなりました。「夏祭り」や「漫画」など各グループで様々な切り口から捉えた企画が次々と発表され、どのグループもお互いのプレゼンに聞き入っていました。プレゼン時間が4分という制限の中、伝えきれるようにどのグループのプレゼンターも真剣です。
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ワークショップ3
各グループの中から、最も発表が優れた第1位が選ばれました。選ばれたのは「トイレ」をテーマに企画をたてたグループ。谷川さんの審査基準は、4分という短いプレゼン時間で相手を納得させるために必要な、テーマの明快さと相手がイメージを膨らませるような展開方法でした。第三者に伝えるためには、誰もが風景やイメージをパッと想像させるものを語ることがプレゼンにおいては大事だとお話をいただきました。1位のグループには谷川さんから非売品であるJTQのトートバックをプレゼント!1位のグループメンバーから喜びの声が上がりました。
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総評
各グループの発表を振り返りながら、谷川さんは「今回の発表に出ていない企画を、今後我々は考えなければならない」と語りました。最後に、学生に向けて、「創造するということの可能性や力を信じてもらいたい。本当に何のために新しい価値を生み出そうとしているのか、という自身の声と向き合ってほしい。汗水流して努力した、その人がかけた熱量はアウトプットに比例するものなので、頑張って行ってほしい。」と締めくくりました。知的好奇心とクリエイティビティを沸き起こさせるような内容となった今回のプログラムでした。
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