PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「JAPAN OF DESIGN」

クリエイティブディレクター/デザイナー

中野 一男 氏Kazuo Nakano

PROFILE
「SONY」「TOYOTA」「富士通」など、多くの企業のポスター、CI/VIなどプロモーションツールのデザインを担当。紙媒体を中心に、グラフィックや3DCGデザイン、写真、映像と様々なメディアでの表現を行っており、また、Webコンテンツのプランニング、電子書籍のプランニング、空間デザインなど各種プランニング業務やクリエイティブソフトのチュートリアルの執筆やデモンストレーションなども行なう。フリーランスのクリエイターによる制作組織である『Project BB』を発足および運営し、様々なメディアで活動しているクリエイターとクライアントとのマッチング業務も行なっている。東京デザインプレックス研究所講師。

第1部:トークショー「JAPAN OF DESIGN」

講義1

今回のプレックスプログラムは中野一男さんです。中野さんは今回で2回目の登壇となります。グラフィックの分野にとどまらず、3DCGデザイン、Webデザイン、映像と幅広い分野で活躍されているクリエイターです。中野さんは、実際に東京デザインプレックス研究所のグラフィックデザイン専攻でも、教鞭を執っているため、今回は中野さんの教え子も多く参加しています。
中野さんはもともとイラストレーターとして活動を始めたそうです(バブル当時は1枚描いて50万、80万という時代だった)。ただ、イラストは、やはりブームも大きく影響するので、そのタッチが飽きられると一気に下火になってしまう。そのため、当時はまだそれほど普及していなかったグラフィックデザインに目をつけたそうです。

講義2

全く知識がない中でのスタートだったが、デザイナーであるアメリカの友人のオフィスを見学して「これからはデジタルの時代になる!」と確信し、当時180万円ぐらいしたMacを空輸したそうです。そうしてCITIZENの仕事などを受けるようになっていったとのこと。更に、同じく当時では珍しかった3DCGや、Webデザインの仕事も行うようになり、必死で覚えながら仕事をしていったというエピソードに、中野さんの旺盛なチャレンジ精神が感じられます。
最近面白く感じている仕事が「プランニング」だそうです。自分で企画を持ち込み、グラフィック・Web・映像を問わず仕事を取っていくとのことで、中野さんが手掛けた様々なプロモ映像を見ていきます。

講義3

中野さんが手掛けたモリサワフォント、CANONのプロモ映像や、救命病棟、ビフォーアフター、ポケモン、マウントレーニア、ドラゴンボールなどのTV用CG映像は、多くの方が目にしているもので、皆さんも真剣に見入ります。
更に、クライアントにGOを出させるスキルということで、対照的なイメージの提示方法やコミュニケーションが苦手な方向けのデータ武装の重要性などをアドバイスしていただきます。
「デザインはセンスではなく、天才である必要はないと。消費者はむしろ普通の人なので、普通の感覚+少しの遊びがあればやっていける。」という中野さんの一言には、多くの未経験者が勇気づけられました。

講義4

「今は従来ありえなかったものがCGになっている時代(チョコレートのCMのトロっとした映像や、シャンプーのCMで出てくるサラサラの髪、リップのCMのぷるんとした唇なども実はCG)、だから時代に合わせてデザイナーも進化していく必要がある。」という中野さんの一言に、多くの参加者が驚き、感心します。ただ、自分一人で全てのジャンルを行うのは厳しい。だからこそこういった学校で、ジャンルを超えた繋がりを持って欲しい。参考書で実践のスキルは身につかないから、プロから学び、更に色んな人と繋がって、時代に対応できるデザイナーになって欲しい、というアドバイスも皆さんの心に刺さったようです。

第2部:ワークショップ「5年後の東京オリンピックに向けて、外国人向けの商品企画」

ワークショップ1

今回のワークショップは、前回の中野さんのプレックス授業で行った「2020年の東京オリンピックにあたって、日本の和を世界に知ってもらう」というテーマです。ちなみに前回は『歌舞伎の隈取が書かれたフェイスマスク』など、今市場で注目を浴びているプロダクトと同様のアイデアが飛び出すなど、充実したワークショップでした。それぞれグループに分かれ、ワークショップスタートです。中野さんも今回はどんな内容が発表されるのか、各グループを回りつつ楽しみに待ちます。

ワークショップ2

最初のチームは印籠のケースに入った、刀を模した爪楊枝です。中野さんからは、面白いアイデアだけど、コストがちょっと心配かもね、とのこと。また、既に刀型の爪楊枝が市場にはあるそうで、もう一息アイデアを練り直す必要がありそうです。他にも寿司のネタが石鹸、シャリがソープディッシュという“SUSHI SOAP”というアイデアでは、石鹸であるネタ部分(トロやエビ)の付け替えができ、様々なビジュアル・香りを楽しめるという企画には、中野さんも「くだけてていい!こういう話し合いの中からアイデアが生まれる」という講評をいただきました。

ワークショップ3

他にも、自分や家族の顔を、3Dプリンターを使ってこけしにできる“We are the Kokeshi”や、漢字や日本の漫画キャラクターを海苔にずる“NORI-e”など、工夫を凝らしたプレゼンが続きます。
中でも日本の四季を感じる、香りを贈る筆ペン“筆香(Hitshuka)”をプレゼンしたチームは、特に注目されていました。化粧品のマスカラのような高級感のあるデザインで、桐箱に入っており、インクから日本の時期を感じさせる香りが出るそうです。中野さんからも、海外で日本の文具は人気があり、クオリティの高さも評価されている。商品化する価値がありそうと講評をいただきました。

総評

最後に、中野さんから総評です。「前回もお話しましたが、デザインに瞬発力があって非常に良いと思いました。通常の授業で一人でのプレゼンとなると、なかなかこの短時間でここまでのアイデアが出ないのが惜しいと感じる部分もありますが、是非良い意味で、くだけて、遊んで、良いデザインをしてください!
また、良いアイデアが折角出たのであれば、企業に持ち込んだり、クラウドファウンディングで実現を試みてみるなど、積極的に動いてください。必ず、良いものを作れば見てくれる人がいますよ。」 中野さん、ありがとうございました!