テーマ:「SOMETHING NOT OLD, SOMETHING NOT NEW ~温故知新~」
クリエイティブディレクター
石井 大介 氏Daisuke Ishii
- PROFILE
- 大学在籍中にアパレルブランドの立ち上げに参加。卒業後渡米し、 Parsons School of Designに於いてデザインを学ぶ。ニューヨークの制作会社で映像・グラフィックの制作に携わり、帰国後、デザイン関連の教育機関にて開発業務に従事。その後独立し、ファッション、インテリア、ICT関連の企業などでデザインコンサルティングに携わっている。現職は京都芸術大学の専任講師。元東京デザインプレックス研究所デザインストラテジー専攻講師。
第1部:トークショー「SOMETHING NOT OLD, SOMETHING NOT NEW」
講義1
今回のプレックスプログラムは4回目の登壇となる、クリエイティブディレクターの石井大介さん。アパレルブランドの立ち上げから、アメリカの名門Parsonsを卒業し、現在は様々なデザインコンサルティングを行っています。東京デザインプレックス研究所でも、デザイン戦略を学ぶ『デザインストラテジー専攻』の講師を担当していただいており、基本となる「デザインアプローチ基礎コース」「デザインファンデーション養成コース」及び、応用編の「デザインアドバンスト実践コース」まで、カリキュラム開発から携わっていただいています。 既に石井さんの授業を受けている参加者が多かったこともあり、普段通りの授業のような雰囲気でプレックスプログラムがスタートしました。
講義2
今回のテーマは「SOMETHING NOT OLD, SOMETHING NOT NEW 」。結婚式における欧米の習慣である“Something Four”をヒントに、今回のタイトルを考えたそうです。石井さんが最近の欧米のデザインで特に注目している、「古くもなく、新しくもないデザイン」について、欧米の文化や音楽、アパレルなどを例に説明していきます。 音楽では、BeckやAlabama Shakes などの著名なアーティストを例に、「SOMETHING NOT OLD, SOMETHING NOT NEW 」とはどういうものかを話していきます。彼ら(彼女ら)は、欧米音楽の原点とも言える曲を引き継いで、継承している。だから古くもなく、新しくもない音楽になるとのこと。 参加者の方の中には、欧米のデザインや音楽などを人並み以上に好んでいる方も多かったようで、何度も相槌を打ちながら聞いています。
講義3
他にも、日本でも馴染みの深いラルフローレンや、逆に日本ではあまり知られていないPop up Flea (アメリカの古き良きものを、同じ目的を持っている人達が集まって作る期間限定のフリー・マーケット)、カリフォルニア州のオーハイやベンチュラ、ポートランドなどを例に、「SOMETHING NOT OLD, SOMETHING NOT NEW 」を理解していきます。 日本の言葉で言うと、“温故知新”が最も近いニュアンスとのことで、残すべきものは残して、アップデートするものはアップデートすることの重要性を説明していただきました。 参加者も、新しいものばかり追わず、時には原点回帰することの必要性について、デザインをしていく上で大きなヒントになったようです。
第2部:ワークショップ「日本のSOMETHING NOT OLD, SOMETHING NOT NEW」
ワークショップ1
今回のワークショップは、「日本のSOMETHING NOT OLD, SOMETHING NOT NEW 」です。各5名、12チームで3つのテーマの中から、各チーム一つを選んで、日本の伝統を継承し、アップデートしていく企画を考えます。テーマは以下の3つ、 A、日本におけるライフスタイル提案型のデザイン雑誌の企画 B、ファッションECサイトorキュレーションサイトの企画 C、渋谷駅周辺1km圏内でのデザインイベントの企画立案 上記いずれかのテーマで対応していきます。A、B、Cの中から好きなものを選択するため、ある程度偏りがあるかと思われましたがAのテーマが5チーム、Bが3チーム、Cが4チームと、比較的綺麗に分かれました。
ワークショップ2
また、今回のワークショップは石井さんの授業でも行っている、企画で考慮すべき3つの点も考えながら進めていきます。 1 Originality:アイデンティティの核となる独自のコンテンツ開発 2 Business:市場での位置づけを具現化し実現、継続する 3 Communication:社会との関係性を構築する 各チームに1、2名は石井さんの授業を受けている方がいるで、初めての参加者にもチーム内で簡単なレクチャーをしつつ、打ち合わせしていきます。「プロジェクトマッピングを使用して、日本の伝統であるお祭りをバーチャルで表現する渋谷駅のイベント」や「日本の伝統工芸を継承できる人を探している職人と、継承したい人をSNSや誌面で繋げる企画」など、個性豊かな意見が交されます。
ワークショップ3
各チーム、出揃ったアイデアを精査して、発表用のA3用紙に内容をまとめていきます。まとめていく中で「この箇所をもう少し練り直しては?」「この企画のアウトプットとして、そのツールはやっぱり現実的ではないかも」など、チームでのワークショップならではの展開になり、複数名で企画をまとめることの難しさも体感していきます。 いよいよワークショップの時間も終了となり、あとは各チームの発表を待つのみです。各チーム、与えられた数分のプレゼンタイムの中で、企画の魅力をアピールしていきます。
ワークショップ4
全12チームの全ての企画が発表されていきます。4番目にプレゼンしたチームのテーマは「I was here and now on 」。渋谷でもあまり知られていない渋谷川(唱歌「春の小川」のモデルになったと言われています)の、駅前開発後の川の跡地に皆で足あとを残そうというイベントの企画です。足あとを残した様子をSNSなどにアップして、その存在を引き継いでいこうという主旨に、TDPソーシャルデザインラボのラボ長を務めている石井さんも思わず感心。 他のチームからは、「渋谷七夕イベント」の企画。渋谷の特徴である道玄坂や宮益坂の傾斜を利用して、電飾付きの竹で流しそうめんを行うイベント。電飾によって天の川も表現できるというユニークなアイデアに、会場も盛り上がります。
ワークショップ5 & 総評
他にも多数のチームの発表がなされ、最後のチームは「Fabion」というECサイトの企画です。「あなたの大切な一点物の服も、時代とともにデザインやシルエットが古くなるもの。それを今後ももっと大切なものにできるようにする。」というコンセプトで、服をリファインしたい方と、それができるデザイナーを繋ぐECサイトの発表は石井さんも興味深く聞いていました。 最後に、石井さんから一言。「皆さん個性的な企画で、それぞれに可能性があり、とても良かったと思います。正解が見えないようなものをデザインしていく時、ブレストを繰り返し、マインドマップなども駆使して、チームで共有したり認識したりすると更に良くなると思います。ワークショップで出したアイデアは経験として積み重なっていくから、たくさん行ってください。」石井さん、ありがとうございました!