PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「コンピュテーションとデザイン」

建築家

福田 一志 氏Kazushi Fukuda

PROFILE
建築家。武蔵野美術大学/大学院卒業、ヴェネツィア建築大学(イタリア政府給費留学生として)留学、設計事務所勤務を経て、現在一級建築士事務所インターコア代表。専攻建築士(統括設計/まちづくり/教育・研究)、一級建築士、インテリアプランナ一、インテリアコーディネーター、Vectorworksプロフェッショナルアドバイザー。家具から都市計画まで幅広い分野で設計活動を行う。ヨーロッパ・アメリカ・アジアと、海外での生活/仕事での経験を生かし、独自の世界観で時の経過のなかでも風化せず存在し続ける空間づくりに没頭中。近年は、「デザインを行う思考過程の中でどの様にコンピュータとの関係を築くか」などをテーマに、教育の分野にも携わる。東京デザインプレックス研究所講師。http://www.i-core.jp

第1部:トークショー&ワークショップ「コンピュテーションとデザイン」

講義1

本日は建築家の福田一志さんを迎えて行っていきます。 福田さんは東京デザインプレックス研究所でも教鞭をとっていますので、空間デザインクラスの受講生にはお馴染みの先生です。福田さんから以下のメッセージを頂いてからのスタートです。「グラフィックやインテリア、建築、プロダクト、WEBとデザインを行う上でコンピュータは不可欠なものになっていますが、人間とコンピュータとの関わり方が今、大きく変わろうとしています。コンピュータを使用したデザインの可能性と価値観についてみなさんと一緒に考えてみましょう!ワークショップはテーマに関係したことを、皆さんの明晰な頭脳を使い、繊細な両手によって表現していきたいと思います。」

講義2

まずはモノ創りの根幹となるアートとデザインの違いを解説いただきます。アートの題材としては現代アートの代表作の一つデュシャンの『泉』に始まり、純粋芸術とも言われるアウトサイダーアートまで、実に福田さんらしいロジカルな切り口でご解説いただきました。
福田さん曰く「アートはアウトサイダーアートの純粋制作欲に見られるようにそこに“人”は介在していないことが多いです。ですが、デザインに“人”が介在しないことはありえなく、ここを明確にしておくとデザインに対して楽に取り組むことができます」 普段、教鞭をとっていただいている福田さんらしく受講生のお悩みポイントをついてきます。

講義3

「デザイン自体がターゲットを明確にすることで、扱いやすくなることですが、そこで次に問題なるのはデザイン自体の美しさです。美しいデザインを作るためにはどうすれば良いのか?これも大きな悩みの一つです。それは現代に始まったわけではなく古くからモノを作る人たちの関心事でした。」この美しさの解説を「黄金比率」を例にとって講義していただきました。聞いたことのある黄金比率ですが、ここまで深くアートやデザインに関わっていたとは知らない受講生も多く、会場はメモをとる音が聞こえて来る勢いです。

講義4

続いてはコンピュテーションに関してです。「コンピューターが人間の代わりになり、人の意思通りに何かを描いたり作ったりする。それが今までのコンピューターと人との関わりでした。近年のコンピュテーションはもう一歩先を行ってます。つまり人が想像できない若しくはたどり着くまでに相当な時間がかかる領域に一瞬で至ってしまう。これにどう向き合うか?で作品そのものが大きく変わるのが現代のデザイン業界の潮流になっています」

講義5

そして最後は価値観の話をしていただきました。「アートの世界では作品自体よりも誰が作ったか?サインはあるか?といった背景でモノの価値が決まることが多くあります。中には拝金主義的な価値観もあり、自分の中の価値観が整っていないと、混乱してしまうことが多くあります。皆さんには是非、価値観・倫理観に関しては深く突っ込んで考えて欲しいです。コンピュテーションによって今までにないものが作れるようになってきました。そんな時代だからこそ各自が自分自身の価値観・倫理観をしっかりと持ってください。
これで前半は終了です。

ワークショップ1

後半はワークショップです。福田さんからの説明の後、A4用紙2枚とハサミとナイフが配布されます。「深く考えずにハサミで切込を入れてください。そして適当にホッチキスで切った部分を止めていってください。それを二つ作ってください。」と指示が入ります。前半の講義で黄金比率やアートとデザインの違いをロジカルにお話し頂いた後だけに、受講生は何が起こるんだろうと恐る恐るハサミを入れて行きます。そして切った部分をホッチキスで止めて行ったところで、次の説明が入ります。「作った二つを、まず繋げてください。これから100分の1サイズのミニカーを配ります。そのミニカーを今切って貼り付けた紙の前に置いて、写真を撮ってください。」

ワークショップ2

写真を撮った受講生から「お~~」と驚きの声が上がります。その様子を見た福田さんから以下の説明が入ります。「どうですか?わずか数分なのに、随分いい作品ができたと思いませんか?まるで有名建築家が立てた建物の前を颯爽と走る車に見えないですか?今、皆さんが作った作品は当初から意識していたら、作るのは難しかったと思います。」説明が入り受講生もようやく勘が掴めて来た様子です。その後は[隣の人と一緒にして帽子にする]⇒[5~6人のグループになり、大きなネックレスにする]と続き、最後は一人の受講生にコートとして着てもらう。でフィニッシュです。 

総評

福田さんからこのワークショップについて、まとめのお話があります。「よくデザインは難しい。よく分からない。と言った嘆きめいたことも皆さんからも聞きます。今回のように難しく考えずにとにかく手を動かし作ってみる。すると見方を変えれば立派なアートやデザインになることも大いにあるんです。またデザインは複数の方とともに行うのが基本。なので、無理に一人で頭を抱える必要もない。いろんな人と力を合わせて作り上げることも大いにあって良いんです。」
少し頭が柔くなった一日でした。福田先生ありがとうございました。