テーマ:「諦めない心と多様性」
アートディレクター
千原 徹也 氏Tetsuya Chihara
- その他担当講師
女優 菊地 凛子 氏
- PROFILE
- 1975年京都府生まれ。デザインオフィス「株式会社れもんらいふ」代表。広告、ファッションブランディング、CDジャケット、装丁、雑誌エディトリアル、WEB、映像など、デザインするジャンルは様々。近作では、桑田佳祐アルバム「がらくた」のアートディレクション、関ジャニ∞アルバム「ジャム」のアートディレクション、ウンナナクールのブランディング、小泉今日子の35周年ベストアルバム、装苑の表紙、NHKガッテン!ロゴ、adidas Originalsの店舗などが知られている。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。
第1部:講義「諦めない心と多様性」
講義1
今回のプレックスプログラムは、ご友人同士でもあり、いくつもの作品でコラボレーションをする、アートディレクターの千原徹也さんと女優の菊地凛子さんをお迎えします。講義は菊地さんにとって大きな転機となった映画『バベル』のお話から始まります。「自分のキャリアが15歳で始まって、代表作が25歳の時までに無ければ潔く辞めようと思っていました。普通は7年で結果が出なかったら、と言われているらしいんですけど、しつこかったんです私。だから切りよく10年。これでだめだったら…と思っていたので、1年のオーディションを乗り切れました。」そうして役を得たのが、24歳の時だったそうです。
講義2
その後、アカデミー賞へのノミネートをされるなど国際的な活動をスタートされ、日本の所属事務所から独立をし、アメリカへと渡ります。「アメリカは、リスクがあってもどこかで才能を認める所が私はあると思います。すごく狭いけどチャンスは与えてくれる。」とお話がありました。そして千原さんは渡米した菊地さんから受けた「やったものがそのまま金額に跳ね返るのがアメリカ。会社員だとその評価が分かりにくくなる。クリエイターとして自分のアートにちゃんとした金額を付けてもらうのがクリエイターなのでは?」という言葉で独立を決意したそうです。
講義3
インターナショナルな菊地さんですが、多くの渡航を繰り返し、新しい生活を始める事は「毎回、正直いやです。」と意外な言葉が。それでも「人と人との関係性の間にしか、自分の想像力を豊かにしてくれるものはないと常々思っているんです。映画よりもリアルが現代生活にあるじゃないですか。今年はミネソタで北の人たちと話をしたり、イタリアの人と話をしたり。人と話すと自分がクリエイティブになる。私はそれがすごく好きなんです」とお話があり、菊地さんの探求心を学生も感じ取っている様子でした。
講義4
講義は千原さんの作品紹介へ。多くのファッション広告を手掛けてきた千原さんですが、最近では森美術館の「六本木クロッシング」などファッション以外のデザインをすることも増えてきたそうです。「保守的なクライアントだとしても、僕も保守的に返すのではなく、今までそのクライアントがやったことがないことを提案する、というのが自分のスタイルとしては大事かなと思っています。」と千原さん。プレゼンでは困惑されることもあるそうですが、それで貫き通されるスタイルは、新しいデザインを求めるクライアントに高く評価されています。千原さんと菊地さんのコラボレーション作品となった『Zucca25th』のプロモーションは、菊地さんの提案でショートフィルムを撮影することになり、千原さんは「デザイナーだけで話をしていくのではなく、違う尺度で物事を見ている人の意見を入れてみたらどうなっていくのか、というのを見ながら、完成に持ってくのは面白かったです。」と語り、菊地さんも「監督と脚本をやってみて、たくさんの制約があることを初めて知ったんです。とても勉強になりました。」とのことでした。
第2部:Q & A
Q&A 1
たくさんの質問の中から、特に印象的だったものをご紹介します。「アピールする時や自分を売り込む時の、核とか喋り方、ツールなどを教えてください。」という質問に、千原さんからは「僕の金髪眼鏡っていうのはひとつの武器で、逆に黒髪で普通のおにいちゃんって服装でプレゼンに行くと緊張するんです。訳わからんのが来たと思われているほうが、どんな質問が来ても“いいや金髪やし”と思われる。」菊地さんも「仕事に直接関係なくても、これがあれば勝てるというものを見つけたらいいと思います。それを見つけるのはすごく孤独な作業なんですけど、是非やってみてください。」とアドバイスをいただきました。
Q&A 2
また、続けて菊地さんからは「映画祭に行くとレッドカーペットがあるんですけど、自分が選んだものを着ていくと死ぬほど緊張するんです。何が自分の武器になるかというと、自分の演じた作品や女優魂じゃ一切ないんです。私には洋服とピンヒールなんです。私がシャネルを着るのは、シャネルが私に勇気を与えてくれるからなんです。」と印象的なエピソードもご紹介していただきました。
Q&A 3
最後に千原さんからは「今日の話の中で“諦めないで”というのが一番印象に残っています。皆が目指す山ではなく、自分だけの山を探って行くということを心掛けていけば、何も気にしないで苦しいことにも没頭できると思うんです。」とお話をいただきました。菊地さんからは「未だ自分も不安ですし怖いですし、もしかしたら明日からできないかもしれないと思う中で、その過程を楽しむようにしています。“あかん、もうできん”って言っているのは楽だけど、ポジティブに物事をとらえるのは、ものすごく努力がいるんですよ。私はまだ途中にいるんだなと常々思うんで、過程も大事にするというのが大切なんかなという気持ちです。」というアドバイスをいただき、本日の講義は終了です。
総評
千原さん、菊地さん共に「諦めない」という 姿勢を強く実践された結果、今があるのだと 感じた講義でした。