PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「もてるデザインの作り方」

Three&Co.代表/アートディレクター

福森 正紀 氏Masaki Fukumori

PROFILE
Three & Co.代表/アートディレクター。Katachiを経て、’04年Three & Co.設立。グラフィックデザインの視点と媒体にとらわれない思考をもとに、マスコミ広告、パッケージ、エフェメラ、さらにはステイショナリーや家具までデザインの幅を広げ、国内外へ発信。’11年には「京町堀マメ6」オープン。’07年オーストリアザルツブルク発の雑誌「ARCHIVE」の表紙を、日本人として初めて飾る。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。【主な受賞歴】’05年日経広告賞/消費者のためになった広告CM部門銅賞/’07年日経月刊広告賞/ロンドンインターナショナルデザインアワードビローザラインファイナリスト/’10年日本タイポグラフィー年鑑入選/’11年日本パッケージデザイン年鑑入選/ADSTARSファイナリスト/12年ACCマーケティング・エフェクティブネスメダリストPRアワード部門最優秀賞/British Art Director’s ClubD&AD Silver/ウェブサイト部門キャンペーンサイト賞銅賞/第59回カンヌ・インターナショナル・アド・フェスティバルPromo&Activationフード&サービス部門Silver Lion受賞、インテグレーテッド部門SilverLion受賞等、その他国内外多数。

第1部:講義「もてるデザインの作り方」

講義1

「大学でデザインを学んだわけではないし、専門学校もろくに卒業していないし、他の独立したデザイナーたちとは歩いてきた道が違う」とはじめに軽い自己紹介をしてくれた福森さん。まずは独立前のお話。デザイン事務所に入社をしてもなかなか仕事がもらえず悩んだと言います。そこで当時はまだ社内でも使いこなせる人がいなかった“Mac”に目を付け「Macが使いこなせたら仕事もらえるんじゃないのか」と単純な想いがきっかけで仕事をもらえるデザイナーに。

講義2

「なんでもかんでもスペシャリストになろうと焦 らないでほしい」と自らの経験を踏まえ〈仕 事をもらえるデザイナー〉になるアドバイスをい ただきました。 次は〈選んでもらえるデザイナー〉になるために、社内コンペではライバルとなる同僚たちのアイデアが出揃う締切1時間前から取り掛かったそうです。ライバルたちのアイデアを見て、それを“パクる”のではなく「足して2で割って、自分ならもっと良くなる」という風にし、「周りが5案出していたら自分は10案出す」というように自分自身を追い込み〈選ばれる〉努力を続け、独立を決めました。

講義3

独立してからは仕事が全くない3~4か月を過ごしますが、この暗黒期間を経て「仕事は投資。もっと先のことを考えて引き受ける」という発想に変わり、これまでのやり方を一新し、独りよがりのエゴイストになるのではなく、自分のポテンシャルを信じ与えられた時間と予算で精一杯のいいものを作る。「自分でハードルを上げ、仕事を切り拓いていった」とこれまで福森さんが手掛けてきた広告を紹介しながら話していただきました。

講義4

携わった仕事の中には広告で表現するのがとても難しい内容も多々あったそうです。「だから興味を引くビジュアルを作った後はネットで検索させればいい」と、〈仕掛け〉としてのデザインの在り方や、各メディアで話題となったAKB48を使用したグリコの「江口愛実」についても触れ、「広告は良くも悪くも世論」という経験者にしか感じられない声を教えてくれました。

第2部:ワークショップ「お中元を企画してみよう」

ワークショップ1

続いてワークショップ。今回は個人で考えていきます。毎年工夫をこらしたお中元や年賀状を送っている福森さん。日本特有の文化を〈媒体〉と考え、固定概念を捨て「これあったら嬉しいけどお金を出してまで買うものでない」ものを生み出せるかがポイント。投票もあるのでタイトルも忘れずにつけていきます。

ワークショップ2

シンキングタイムと投票終了。結果発表です。ストラップ型ケータイ充電器、ごみ袋になるレジャーシート、指輪のデザインを施したバンドエイド、見ると褒めてくれるペットボトルキャップ、応援してくれるトイレットペーパーと人気のお中元はどれも個性豊か。上位作品以外でも福森さんの興味を引くお中元がたくさん提案されました。「これはどういうこと?」「すごいシュールだよね。」など数々のアイデアを楽しんでいただきました。

総評

「難しいのは1つ考えて100人、200人分作らなければいけないこと。赤青鉛筆のように〈本来のもの〉プラス〈使えるもの〉を考え出せたらいい。広告が広告だけに終わらないようなものを開発する脳をデザインの世界だからこそ持っていて欲しい。〈機能するデザイン〉を考えられる発想が今後は大事になる。今の柔軟な発想を大切にしてほしい。

グラフィックデザインは生きていく上で必要ない。だから努力しなくちゃいけない」努力を積み重ね、そしてユーモア溢れる人柄が〈モテる〉秘訣なんだと感じました。