テーマ:「FEEL THE COLOR」
建築家
エマニュエル・ムホー 氏Emmanuelle Moureaux
- PROFILE
- フランス生まれ。1995年フランス国家建築家免許取得。1996年より東京在住。2003年に一級建築士免許取得後、エマニュエル一級建築士設計事務所設立。色彩と日本の間仕切りの発想を組み合わせた「色切/shikiri」を編み出す。その「空間を色で仕切る」というコンセプトから、色を平面的ではなく三次元空間を形作る道具として扱い、建築(巣鴨信用金庫志村支店他)、インテリア(ABCクッキングスタジオ他)、プロダクトデザイン(stick chair他)、インスタレーション(ユニクロワールドキャンペーン“thin thin thin”他)まで幅広く手掛ける。2009年emmanuelle moureaux architecture + designに改称。東北芸術工科大学准教授。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。
第1部:講義「日本の色と仕切り」
講義1
ムホーさんが色にこだわるきっかけとなった、日本の〈色〉と伝統的な〈仕切り〉についてお話していただきます。「フランスの町は色が統一されているけど、日本はカラフルな屋根や看板で町に色が溢れている。」と、初めて来日した際の衝撃を語るムホーさん。整列されたフランスの町並みに比べ、日本の建物や看板、電線が作り出すいくつもの〈重ね〉と〈隙間〉は、風景に奥行きを出しているといいます。学生にとって見慣れている東京の風景も、あらためて海外と比較してみることでその特徴や面白さに気付かされます。ムホーさんのデザイン「色切/shikiri」手法は、日本での生活で得た二つの気付きが元となっています。
講義2
一つは襖や障子といった日本の伝統的な〈仕切り〉の文化が失われつつあると感じたこと。もう一つは、町には色が溢れているのに、今流行の建築物や空間デザインはモノトーンであるという矛盾を感じたこと。色を二次元的な仕上げではなく、三次元を形作る一番重要な要素として捉えることで、「色で空間を仕切る」という全く新しい手法「色切/shikiri」が生まれました。
講義3
最後は、ファッションブランド「ISSEYMIYAKE」や、料理教室「ABCクッキングスタジオ」など、これまでムホーさんが手がけた建築物や空間デザインの紹介です。いずれの作品も目で見て楽しく、その場で色のパワーを体感できるように配慮してデザインされています。
<>「自然を感じてもらう」というテーマでデザインされた巣鴨信用金庫は、24色を使ってくつろぎの空間を演出。一見銀行には見えないほどのアーティスティックな外観には、学生たちは感嘆しきりの様子でした。
第2部:ワークショップ「FEEL THE COLOR( 色を感じる)」
ワークショップ1
今回のワークショップはできるだけ多くの色を見て、感じて、そして感覚的に選んだ上「色の空間」を提案すること。まずはランダムに並べられた55色の色紙が1枚ずつ配布され、これを各自で1つのグラデーションになるよう並べ替えます。次にこのグラデーションを「ピンク・赤」「茶」「オレンジ・黄」「緑」「青・紫」の5つのカラーファミリーに分類し、1つのカラーファミリーから好きな色紙を5色、計25色を選び出します。今回のワークショップはできるだけ多くの色を見て、感じて、そして感覚的に選んだ上「色の空間」を提案すること。まずはランダムに並べられた55色の色紙が1枚ずつ配布され、これを各自で1つのグラデーションになるよう並べ替えます。次にこのグラデーションを「ピンク・赤」「茶」「オレンジ・黄」「緑」「青・紫」の5つのカラーファミリーに分類し、1つのカラーファミリーから好きな色紙を5色、計25色を選び出します。
ワークショップ2
ここまでくるといよいよ作品制作の始まり。色紙と同じサイズのスチレンボードが1人4枚配布され、これと選んだ25枚の色紙を使って一つの作品に仕上げます。決まり事は25色すべてが作品のどこかに入っていること。スチレンボードは何枚使うか、また平面的、立体的に使うかは個人の自由です。制限時間は45分。切ったり貼ったり組み立てたり、白いスチレンボードという〈空間〉が段々と色付いていきます。
ワークショップ3
制限時間が過ぎてもなかなか手の止まらない学生たち。作品制作にすっかり夢中です。やっと全員の作品が出そろうと一人一票の投票タイム。切り絵である場面を再現した作品や、タイルの様に色の敷き詰められた空間を再現する作品。今回は平面から立体まで自由な作品形態なため、いつもに増して個性的な「FEELTHECOLOR(色を感じる)」235作品が完成したようです。
ワークショップ4
第2位は色紙のグラデーションで山の色の移ろいを表現した作品と、平面に不規則な多面体を立てて四季を表現した作品。第1位は細かい三角形の色紙で龍が天に昇る様子を表現した作品と、4枚のスチレンボードの間に色紙の球体を挟んでさらに立体感を出した作品に決まりました。「平面の作品も多く見られますが、立体にするともっと面白くなるかもしれません。普段は二次元での仕事をしている人も、たまに立体の作品を作ってみるといいです。」とムホーさんからも講評をいただきます。
総評
「頭の中でイメージするだけでは、使う色が限られてしまうので、普段から色の素材をたくさん集めるように心がけてみてください。色をたくさん持っていると、自分の色の見え方も変わってきます。」「仕事だけでなく自分から何かを発信すべきだ」と考えているムホーさんは、毎年展覧会で新作を発表しているそうです。今後も町中や展示会で、ムホーさんの手がけたカラフルな作品に出会えるのが楽しみです。