“ 自分ごと” から未来をつくる。
学生の頃、ラッパーをやっている先輩が主催するゴミ拾いに参加したんです。ファッションブランドの「FinalHome」のコートをユニフォーム代わりに身に纏って、ラジオを担ぎながらという、今まで見たことのなかった清掃活動でした。実際に参加して面白かったし、なにより「ポイ捨てするのはカンタンだけど拾うのってキツイ作業だな」と実感できた。実際そのあとは街を見る目が変わり、ポイ捨てできなくなりました。同時に、「楽しそう」「オシャレ!」と感じられる入り口からアクションにつなげるような“デザイン”のチカラも感じたんです。
その後、大学を卒業してWebデザイナーとして就職しました。ハードワークが祟ったのか3年目に体を壊してしまったんです。ゆっくり休んでいるうち、「何のために仕事をしていたんだろう?」と振り返ることができました。ちょうどそのとき、ゴミ拾いを主催していたNPOからWebデザインを手伝ってほしいと頼まれたんですね。NPOの仕事に関わるうちに、社会にはこんなにも課題が山積しているのか!と知りました。実際の課題解決はもちろん、活動内容を伝える、仲間を増やすといったコミュニケーションにおいても、デザイナーにできることがまだまだたくさんあるなと気付いたんです。
そんなとき世界中のグッドアイデアを厳選して紹介する「greenz.jp」を始めました。「greenz.jp」は環境を大切にしなければならない、といった“べき”論じゃなくて、「いいこと思いついた!」というポジティブな気づきをどんどん出してもらって、これからの社会をつくるために対話できるような“場づくり”でもあります。大切にしているのは、どのプロジェクトでも“自分ごと”からはじめてみよう!ということです。自らがシングルマザーだったら、その社会的支援かもしれないし、生まれ育った故郷での環境活動かもしれない。「新聞でみたから」じゃなく、自分にしかないストーリーから生まれる素直な気持ちを大切にして欲しいんです。それぞれの持ち場で、それぞれができることに取り組むこと。それこそ、流行では片付けられないサステナビリティ(持続可能性)の本質です。「greenz.jp」などメディアの役割は、そんなマイプロジェクトをつなげて、ムーヴメントにすることだと思っています。
ですから、これからデザインを学ぼうとする皆さんも、まずは“自分ごと”を見つけて欲しいと思います。それは対話の場に参加して、いろんな人と喋ることでよりブラッシュアップされていくはずです。対話から生まれるものは想像以上にたくさんあるはず。そんな対話を軸としたデザイン教育がどんどん生まれていくといいですね。