田んぼの風景のような、一見何もない所からアイデアを生み出す。
私は新潟で生まれ育ち、子供のころは友達とサッカーをしたりして遊んでいました。雑誌を読むことも大好きで、ワクワクしながら読んでいたのを覚えています。でも子供の頃からデザイナーになりたいと思っていたわけではないし、そもそも絵は苦手だし、美大芸大を受験する人たちが通う予備校に行くということも頭にはありませんでした。
きっかけは高校卒業後の進路を考えていた頃。サッカーは好きでしたが、それを続けていくということは考えていなかったし、それなら自分の熱中できることに関わる他の仕事を、と探っていくうちに大好きな雑誌を作ってみたいと思うようになったのです。それで地元の専門学校に入りました。勉強は楽しかったのですが、ふと周りと比べてギャップを感じることもありましたね。周りはみんな絵が上手かったり、映画が好きだったり、根がクリエイティブでした。当然ながらデザインに興味がある人が集まってくる場所だったのですが、自分はそこまでのめり込んでいた訳ではなかったので、引け目を感じることもありました。それでも、学校での出会いは今も続いていて、パートナーとして仕事を依頼する同級生もいて、人脈はとても大切だと思います。
社会人になって最初の会社では、デザイナーとしての修行をひたすらに行いました。入稿期日に間に合わせるための技術力やデザイン力は、10名程度の会社でもあったので磨かれたように思います。そのうち、クライアントワークに企画から関わりたいと思うようになり、ブランディングを主に行う会社に転職。前職で誰もが知っている案件に関われたことも功を奏して、作品に「安心感があり、かつ分かりやすい」を心掛けてポートフォリオを作ったなという思い出があります。
その後、独立して立ち上げた会社TAMBOは、地元新潟の田んぼの風景のような、一見何もない所からアイデアを生み出していくという意志を込めて立ち上げました。様々なデザインプロジェクトに関わる中で、日本各地の会社のブランディングも数多く手掛けており、地方のビジネスをボトムアップすることが得意分野の一つとなっています。異業種からデザイナーになろうと考えている人に伝えたいのは、自分を信じて、自分が持つ取り柄を掲げてもらいたいということ。デザイン以外の社会経験は、我々にとっては経験できないことで、その方の特徴であり、強みだと思うのです。自分の強みを信念にして、クリエイティブの世界に入ってきてもらいたいなと思います。