インフォグラフィックスは、情報の本質を伝えるもの。
自分は学生の時は、ハンドボールやスキーといったスポーツに打ち込んでいて、大学もスポーツ推薦で社会学部に入りました。絵を描くことは専門的に学ばなかったけど、専攻した社会学で物事の捉え方や記号論を学んだことが、インフォグラフィックスへのアプローチの仕方も含めて、活かされていると思うことがありますね。ただし、当時はそのようなつながりなど考えもしませんでした。就職活動していく中で「広告のデザインをやってみたい」と思うようになったのですが、広告会社に入るにしても、このままでは営業職としての採用になってしまうため、大学卒業後に広告デザイン専門学校へ通い、グラフィックデザインを学びデザイナーとして就職したという経緯があります。
その後、28歳の時に独立したのですが、独立以前から自分のWebサイトでイラストやグラフィックを公開していたので、そこからの依頼をきっかけに仕事の依頼が増えていきました。ひとつの仕事が次の仕事を呼び込む営業活動となるように、常にベストを尽くしていたおかげもあり、次第に仕事の量も幅も広がっていきました。自分が好きで読んでいたカルチャー誌などでイラストを使ってくれるようになった時は、嬉しかったですね。さらにイラストだけでなく、誌面のダイアグラムなども描くようになりました。なかでも、地図に関しては、必要な要素だけのミニマムなデザインに仕上げものが評判も良く、一時期は地図の仕事ばかりしていましたが、2010年頃からインフォグラフィックスの依頼が増えてきました。
専門的な情報を、わかりやすく伝える際に用いられることの多いインフォグラフィックス。クライアントは必然的に専門家であることが多いですね。ですから、こちらもその専門分野について勉強させてもらったり、独自に調べたりすることは必須です。例えば、鉄鋼メーカーの依頼に対しては、どうやって鉄ができるかということから、実際に製鉄所の現場に足を運んだり、鉄鉱石の産地と色の違いなど、デザインに意味を持たせるためのリサーチを行っていくことからアプローチしていきます。
また、インフォグラフィックスは情報やデータを視覚的に表現したものですが、ただ単にデータを見せるだけではなくて、「これを見てこんなことに気づいてほしい」というストーリーを、その情報の持つ本質として伝えるものでなくてはなりません。だから、まずは正しい情報やデータを理解し、伝えるべきゴールを決定することが大事です。また、適切にアウトプットしておかないと、見る人に誤解を与えてしまう恐れもあります。ですから、デザインのための情報収集も受け身でなく、本当にその情報は正しいかを自分で調べることもありますし、アウトプットしたものが別の解釈をされることはないか、検証していきます。正しく見せなければインフォグラフィックスではありません。情報提供していく上で、大きな影響力を持つ仕事だというのを理解して向き合う必要がありますね。