茶の湯をもっと自由に!もっと愉しく!
横浜生まれの横浜育ちだから、むしろ外国文化のほうが身近でした。ヒップホップが大好きで毎日クラブに通うような学生でしたね。そんな矢先、女の子にフラれた勢いで旅に出たんです。大学で哲学を専攻していたのでフランスを中心にヨーロッパを巡ったのですが、そこで逆に日本文化を意識するようになりました。
帰国後は飲食チェーンで働きつつ、何か日本を深く知るようなことがしたいと思って茶道と書道、華道を学び始めました。特に茶道では、今から450年前の人たちがお茶を嗜んでいたことに触れ、とてもシンパシーを感じましたね。茶道とは、人と人とのコミュニケーションそのもの、なのですが、ちょっと身構えるというか、閉鎖的な世界だと思われがちです。でも、クラブで遊んでいるような男が「茶道、面白い!」と発信したら、もっと多くの人が興味を持つだろう、これを広めていこうと考えました。師匠が学んでいた京都の学校に通い、卒業後すぐに茶室、教室を開いたのですが、軌道に乗るまでは自分のブランドを確立するために必死でしたね。その中でたくさんの出会いがあり、ようやく自分のスタイルが見えてきました。もっと自由で愉しい場であるべきだと。
茶室のコンセプトである「SHUHALLY(守破離)」とは、千利休が残した茶道の心得です。まずは師につき学ぶ「守」、他の流派からも学ぶ「破」、ひとつの流派から離れて新しいものを生み出す「離」。いわば成長を示す言葉ですが、独自のスタイルを確立しても、また「守」に戻ってみる。このサイクルを繰り返すことによって、さらに大きなサイクルが生まれる。これが「守破離」の大事な役割であり、コンセプトだと思っています。だから教室で教えているのはあくまでも基本。そこから自分らしいお茶会を考えてもらいたいんです。これからクリエイティブな仕事を目指す人にとって、学校で学ぶということは「守破離」でいうところの「守」、つまり基本的なことを学ぶ部分にあたります。この先、創意工夫を加える「破」や、自分のスタイルを確立していく「離」の段階を、ぜひ目指してください。