新しい時代のための環境づくりを目指す。
音楽が好きで、高校生の時からアナログレコードを好んで聴いていました。特に、商業的でない音楽のプリミティブなところ、例えば農作物の豊作を祈って奏でるような地域文化の色濃い音源が好きですね。音ネタを探しにイギリスやドイツなどに行くようなことも多くありました。インターネットがなかった頃で、とにかく現地に行って探すしかない時代でした。最初はHipHopとかクラブミュージックから入ったんですけど、だんだん誰も寄り付かないジャンルを求めてマニアックになっていく。何事も突き詰めていかないと気が済まない、そういう性分なんです。
大学院で建築を学び、卒業後すぐに独立。当時はインターネットの普及がさらに加速して、時代が大きく変わる潮目どきでした。その意味で起業しやすかったのかもしれません。初めて手掛けたのは、遊び仲間から依頼を受けたレコード店でした。見た目だけでなく、その空間に身を置く人たち同士のコミュニケーションを生む仕組みを提案したことが評価されました。これをきっかけに、表層だけではない自分のデザインへの取り組み方が決まっていったように思います。
僕の中で、“新しい時代のための環境”をデザインする際のコンセプトは大きく3つ。1つめは「建築的な環境デザイン」。好みやテイストなど自らの作家性を発揮するのではなく、求められているニーズと、その場の環境とをつなぐデザインでなければならないと思っています。2つめは「パートナーシップ」。モノが完成したら終わり、ではなく継続性のある仕事をしていきたいな、と。そして3つめは「未来のためのリサーチと実践」です。仕事以外でも積極的にイベントの企画などに関わり、そこで様々な人の話をキャッチアップする――。実際、仕事でもプライベートでも、“人に会うこと”を大切にしています。とりわけ建築とは異なる分野の人から刺激を受けることが多く、様々なインスピレーションが得られます。なので、異業種からクリエイターになろうとしている人は、これまで培った経験を大切にしてもらいたい。ずっとデザインに関わっていたり、クリエイティブ活動を続けている人とは、違う可能性が大いにあると思ってほしいですね。