大切にしてほしいのは「技術を磨くこと」と「自分の想い」。
私は「将来何かになりたい」といったことが一切ない子供だったんですよ。だから、周りから「これをやってみたら?」と言われることが多くて、芸術学部の大学院に進学したのも先生の勧めがきっかけでした。高校時代は帰宅部。いや、「ひとり部活」ですかね。「今月はおでんを探求しよう」と決めてお小遣いで食べ歩いたり、調べたことをまとめたり。でも誰にも公表せず孤独に楽しむ…。変わった子どもでしたが、そのことが後々仕事に繋がっているから不思議なものです。
社会に出た当初は、デジタルコンテンツの制作会社でWebサイトのディレクション業務に携わっていました。そこで情報を整理したり、体系立てて考えたり、コンセプトを設定することが面白いなと感じましたね。当時はWebディレクターが珍しかった時代なので重宝されてもいました。その後、クライアントの勧めで独立して、外資系の大手IT会社のサイトディレクションに携わった際、本社から表彰されたことがあって。それがきっかけで仕事量が増える中、とある変化が生じてきました。
プロジェクトチームを率いる際、メンバーから出たアイデアや決まりごとの経緯をしっかり見える化していく必要があるなと感じて、チームの対話のフレームワークを作って運用したんです。そのノウハウを「我が社の社員に教えてほしい」といった依頼が来るようになって。そこから仕事がコンサルティングに移行し、ブランドマネジメントのノウハウを開発するに至りました。夢や目標を持たなかった私ですが、得意なことはあった。それをマネタイズした結果が、今の仕事なんですよ。
いまクリエイターを目指す人には「技術を磨くこと」と「自分の想い」を大切にしてほしいですね。これから技術がますます進歩していくと、細かい作業はAIなどに任せ、クリエイターは“考えること”が仕事のウェイトの多くを占めるようになるでしょう。だからこそ、技術を磨いてアウトプットするものの質を上げる。流行を追うよりも、自分が何に心を動かされるのかを意識する。やみくもな根性よりも、語彙を増やして自分の想いを伝えるチカラを磨くなど、違う視点でスキルアップを目指すほうがよいと思います。
加えて、人の想いに敏感であることもクリエイターには求められます。人の想いに触れるには、文学作品を読むことがおすすめですね。一番大事なことは、様々なことに興味を抱き、知ろうとする好奇心を軸にすること。この軸さえあれば、おのずとクリエイターとしての道は開けていくものだと思います。