デザインは社会の【みんな】のためのもの。
美大時代の後半、デザイナーとして仕事をしていくことを現実的に考えるうちに、デザインというものは本当に世の中で役に立っているのか?と疑問を感じて、俯瞰的に社会全体を見るようになりました。デザインの業界で巨匠と言われる方々はたくさんいるけれど、作られるものは一部の人にしか届いていないような気がして。価値を生み出して、もっと多くの人にデザインの力を認めてもらいたい!と思ったのです。それもグラフィックデザインやプロダクトデザインなどの分野にこだわるのではなくて、一つの問題をあらゆるデザインの力で解決できる場所があったら素敵だなと。そんなことを二人で話し合い、卒業後1年のタイミングでminnaというデザインチームは始まりました。
最初に請け負った仕事は映像制作でした。二人とも映像に関する知識がなかったので、今考えると無謀な挑戦でしたね。でも、クライアントの想いを表現するには動画が一番いい方法だと感じたし、なんとか形にしたいと思いました。ただ、美大ではフリーランスで生き残る術なんて教えてもらえる訳も無く、当時は、右も左もわからずお金もなかったので必死でしたね。だからと言って、自分達の考えを押し殺すようなことはしませんでした。間違っていると思ったところはその通り発言して、もっとこうしたほうがいいと思えば、依頼された範囲を超えてでも提案しました。ゼロからのスタートだったので空気が読めていない部分もあったと思います。クライアントから「そこまでは求めてない」と言われてしまうこともしばしばでした(笑)。そんなことをしているうちに「この値段でこんな仕事をやってくれた」ではなく「こういう相談をしたらこんな価値を作ってくれた」という評価をいただくようになったのです。
デザインは社会のみんなのためにあると私たちは考えています。ですから、これからはもっと様々な領域に対して、積極的にデザインが関わっていく時代になるといいですね。デザイナーもなんとなく与えられた環境で生きていくのではなく、長いスパンで先を見据えてやりたいこと、やるべきことを考える必要があります。今は非常に選択肢の多い時代。でも、例えどんな選択をしたとしても、覚悟を持って決めたことはすべて正解なのだと思いますし、それを正解にしていくことを楽しんで生きていきたいですね。