義足デザインで世界を変える。
僕が目指しているのは、身体に障害のある人がそのことをポジティブに捉えられる社会です。そのために、義足は基本的には「なじむデザイン」であるかどうかが重要になってきます。日常生活で使用する義足だとしたら、大体の場合好ましいのは街中で歩いていても義足だと気づかないようなデザインで、あらゆる動作が快適に行えるものが好ましいですよね。「なじむ」ものは、工夫が表に出ないので当たり前のように見えるのですが、見て義足とわからないものをつくることは、実は非常に難しいことなのです。
さらに、陸上競技で使用するアスリート用の義足である場合は、見た目を良くすることよりも早く走れる機能性が重視されますし、モデルがファッションショーで義足を履くとしたら、いかにかっこよくウォーキングできるかを目指すべきだと思うのです。つまり、足が無いことをネガティブに捉えるのではなく、義足を加えて“超越”できることになっていったら素敵だなと。例えば眼鏡がそうだったように、義足の技術やデザインの進化が偏見を薄めて、障害を補う機器からファッションアイテムになるような未来がやってきたらすごいですよね。
そして、そのことは日本はもちろん、世界にまで浸透していくようにするのが僕の目指すイノベーションです。発展途上国では、眼鏡でさえ一般化されていないところがあるので、義足はごく一部の人にしか届かないという現状があります。そもそも、義足というものがあることすらも知らない人々がたくさんいるのです。僕ら作り手は、良いものを作るのはもちろん、利用者の文化や宗教、生活スタイル、経済状況などたくさんのことを調べて、その上で普及するためにはどうしたらよいかを考慮しなくてはいけません。その環境にフィットする状態に近づけることが、本当の「良いデザインをする」ということでもあると信じています。そんな風にこれからも義足エンジニアとして、さらに多くの人を巻き込んで、世界を変えていきたいと思っています。