PROFESSIONAL MESSAGEプロフェッショナルメッセージ

菅野 慶太Keita Kanno

PROFILE
WHITE PAPERS Ltd, 代表取締役。広告代理店、空間プロデュース会社を経て、2007年よりTRANSIT GENERAL OFFICEに参画。プロデュース事業部を立ち上げ、コンプレックスビルディングや商業施設などのプロジェクトに従事。2013年WHITE PAPERS 設立。企画とブランディングを主軸に、クリエイティブディレクション、インテリアデザイン、グラフィックデザインなど幅広く活動。ファッション性の高い飲食事業の開発から大型施設の企画開発まで、多彩なプロジェクトを手掛ける。企画やビジネスの組み立てからの参画も得意とし、コンサルティングなども行う。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

Think Simple. Think Minimal.

僕はこれまでに、いくつもの商業施設のプロデュースやブランディングを行ってきましたが、この仕事はイメージと違い、地味で地道なことも少なくありません。華やかに振る舞って仕事をしようとする若い人が多いのですが、それで挫折や失敗をすることも。僕自身も、そう気づくまでに様々な葛藤がありました。若い頃はカッコつけたし、クライアントにナメられまいと自分を大きく見せようとしていました。無理な足し算ですから、自分にもクライアントにも健全なはずはありません。そんな自分に辟易していた時に出合ったのが、ミニマリズム思想。本を読んだことがきっかけで、「引き算の美学」が心に深く入っていったのです。その考え方は、仕事をする上でのベースとなっています。

僕が仕事をする際に意識していることは、「ThinkSimple」「ThinkMinimal」。クライアントやプロジェクトチームと、コンセプトなどの共通理解を得るためには、シンプルに考え、伝えていくことが最良の方法なのです。また、優先順位を判断し、ミニマムな予算で大きな効果を生むための仕組みをつくれるのが、プロなのだと思っています。その際、クライアントに対して、常に取り繕うことのない素直な気持ちで接し、相手にも素直になってもらうことも、必須条件となります。

そして、最終的に信じるようにしているのは、心や直感といった自分の内なる声。それは、僕だけでなく皆さんにも言えることだと思います。自信がないと、周りの意見や、一般的な常識、セオリーを優先したくなるかもしれません。でも、自分自身が納得のいかない状態で物事を進めて、上手くいくはずはないのです。常に、自分の内なる声や直感に耳を傾け、それを信じる、それに従う勇気を持つことが大事なのだと思います。

そうした皮膚感覚を研ぎすませるには、もちろん日々のインプット、アウトプットが必要です。まずアクティブに情報を取りに行く姿勢であってほしいですね。そして、知るだけで満足せず、知識を知恵に、知恵を智慧に昇華させていってください。取り込んだ知識を、自分の身体を使って、実際に目で見て、感じて、自分の声を聞いて初めて理解することに繋がります。さらに、自分では理解できない領域の物事に向き合い、素直に他者の力を借りて解決すること。それを繰り返し、アップデートすることによって、知恵が智慧に変わっていくのだと思います。