効く言葉を生み出すのは、自分の正直な思いです
コピーライターになりたいと思ったのは高校2年生の時です。たまたま乗った電車の中が、マイケルジャクソンとペプシのコラボレート広告でジャックされていて胸を打たれました。それを見た瞬間、広告を作る人になりたいと思ったんです。大学時代には広告会社のインターンシップに参加し、こんなに面白い仕事はないと実感しました。
博報堂に入社し、実際に広告に携わるようになったのですが、しばらくはそれほど仕事にやりがいを見出せずにいました。打ち合わせを突破するためだけにコピーを考えてしまったりして、何だかずっと苦しかった。手応えを感じたのが、入社して5年目に手掛けた千葉ロッテマリーンズの仕事です。この球団のファンだったということもあって、自分が感じていることをそのままコピーとしてぶつけてみました。それが、とても好評で。自分から発信した言葉が、人を惹きつけている実感があったのはこれが初めてでした。それからは、必ず自分の気持ちに正直に書くことにしています。それが高校生向けの広告だったとしても、「きっとこういう気持ちだろう...」と想像で決めつけて処理してはいけないんです。例えば、自分が高校生の時にもどかしいと思ったことと、今の自分がもどかしいと思うことは、具体は違えど本質はあまり変わらない。だから、あくまで高校生のリアルを意識しながら、なるべく自分の気持ちに寄り添うかたちで言葉にするのです。
もう一つ、コピーライティングの仕事で心掛けているのは、なるべく“真ん中の言葉”を狙うということ。広告の仕事は、様々な市場環境や事情を見極めながら、手間と時間を掛けて幅広く方向性を掘り進めていくのですが、意外と真ん中のイスがぽっかり空いていることが少なくありません。その真ん中こそ、一番言いたいことだったりするのですが、そこは誰もまだ言葉としてモノにしていなかったりする。ですから、まずは商品の価値の根っこを一気に掴んでいくことが自分の仕事だと思っています。
就職活動を振り返ると、入りたかった会社に毎日通った記憶が強烈に残っています。この会社に入りたい!という想い以外に秀でたものがなかったので、何が何でも自分の居場所を作ろうと必死に自分を売り込んだんです。これから広告の世界を目指す皆さんにも、強い熱意をもって、自分を突き動かしてもらいたいと思います。「みんなで一緒に就活しよう」という意識の人は、その時点で既に遅れをとっているのかもしれません。たとえ小さな教室の中でも、周りはライバルです。絶対に一番になるんだという覚悟を持って行動してもらいたいですね。