To be is to do.
大学を卒業して入社した電通では、テレビ番組の企画制作を行っていました。独自に企画を作って会社に動いてもらうようなやり方をしていて、割と無茶をしていたな、と思います。次第に「会社が動いてくれなかったら、予算をくれなかったら...」という環境の中で仕事をしている状況自体が居心地が悪くなってしまって。そんな時に声を掛けてくれたのが、音楽プロデューサーの小林武史さん。以前からテレビ番組の企画等でお会いしてから、ことあるごとに相談にのってもらったりしていました。そして、音楽業界に飛び込んだのですが、そこでの経験は自分のコアとなっていきました。
自分がいた広告業界・番組制作の現場は、ターゲット、視聴率、クラスターみたいに、情報を届ける相手のことを無機質な呼び方で扱う。そんな所に、自分は違和感を感じていました。だけど、音楽業界はファンと呼ぶんです。ファンとは自分のアウトプットに対する応援者、支援者ということ。どうしたらファンになってもらえるか、という目線でプロジェクトづくりを目指すことが大切なんだと感じました。自分がつくりたいものは、クライアントがいないとつくれないものではなく、誰かと共有したい未来なのだと。自分にとってのクリエイティビティとは、どういう未来をつくれるか、どういう当たり前をつくれるか、ということなのだと気づいたのです。今、取り組んでいるプロジェクトの数々も全て、自分の好奇心と社会の好奇心の波長が合って生み出したものです。例えば、渋谷区観光協会の代表理事をしているのも、自分がこの街に住み、この街で子育てをしているから。将来、子供の故郷になるこの街が、楽しくて住み続けたいと思ったり、別の場所に移っても自分の故郷だという誇りを持てるような街にしたいというのが自分の好奇心。一方で、渋谷を国際観光都市としてクリエイティビティが育つ街にしていこう、という社会の好奇心も存在しているのです。
「To be is to do.」何者かになりたかったら、doからしか肩書きは手に入らないのではないでしょうか。出世して肩書きを手にいれるということではなく、音を奏でるからミュージシャン、新しい価値をつくるからクリエイターなのです。クリエイターになりたければ、まさに行動するしかないと思います。今、学ぶ立場であれば、学んで学んで学んで、学んだことをアウトプットし続けること。アイデアが出たら実践に向けて動き出すこと。そして、クリエイターとして人生を歩んでいくのであれば、『答え』を出すだけではなく、『問い』をかける存在であってほしい。その連鎖が社会をアップデートしていくエネルギーになるのだと思います。