公私混同がビジネスの原動力に。
僕の中で一番と言える人生の分岐点は、大学卒業時に、野球をとるか、仕事をとるか悩んだことです。怪我をしてしまったということもあり、後者を選び大手家電メーカーに就職。そこで販促や企画を担当していました。業務を経験していくうちに「家電にデザインを取り入れ、新しい家電の価値を創り上げていきたい」と考えるようになり、その気持ちが僕の起業の原点です。ただ、当時はそもそも会社を立ち上げるという意味もわからないまま、若さにまかせて動いていたように思います。おかげさまでこれまで、自分が好きで“楽しい”と思ったことを形にしてこれたと思います。僕の中ではあまり仕事とプライベートの住み分けがはっきりしていないんです。例えば『ハイアール』とのパートナーシップについても、自分が野球チームを作っていたことから生まれたご縁なんです。良い意味で公私混同していることがビジネスの原動力になります。本当は、野球や音楽、ファッションなど好きなことはビジネスにしたくないという気持ちがあるのですが、どうしても繋がっていってしまうんですよね。結局自分の好きなことが、モチベーションになっていくんです。
会社を立ち上げる際には、何冊もの本を読んで「会社経営のために〜すべき」という理論に触れてきました。でも、そういった机上の理論は時代の変化とともに廃れていくものだ、ということは、実践してみてわかりました。要は、変化の著しい今の時代、絶えず計画をアップデートさせていくこと。それはデザイナーになろうと思う人たちにも言えることだと思います。デザインという答えをストイックに導き出していくのもいいのですが、答えそのものが変わった時に、行き先を見失わず、それをチャンスと捉えられるサバイバル力が必要なのだと思います。さらに言うと、本音と建前を見極める力を持ちつつ、要望に対して“余計なお世話”をプラスできる人材が求められるのではないでしょうか。総じて、デザイナーにもビジネスへの理解が必要です。関わる業界や企業全体を俯瞰してみることができる人材がいたら、僕らの会社にもぜひ欲しい人材だと思いますね。まずは、一般的に世の中が評価していない物事に目を向けてみてはどうでしょうか。既にかっこよくなっているものや面白いことに目を向けるのは簡単です。「こうしたらもっと良くなるのに」という視点をもって周りを見渡してみてください。影になっているところにこそ、意外なポテンシャルがあることに気づけるようになってもらいたいですね。