大切なのは「自分が自分であるためにデザインする」という姿勢
私は15歳くらいからデザイナーになりたいと思っていました。手段はぼんやりしていましたが、日本だけでなくグローバルな視点で、デザインを通じて何かを伝えていきたいと思っていたんです。振り返ってみると、アメリカのイーストサイドのHIPHOPやグラフィティアートなどの文化が好きで、そのカルチャーを発信する人たちと繋がりたいと考えるようになったことが大きな原動力になっています。高校生の間に英語を身につけ、卒業してからニューヨークに単身留学してデザインを学びましたが、そこで沸き起こったのは日本の文化に対する関心と探究心。アメリカに憧れ、アメリカに飛び込んで行った自分だからこそ、日本との違いを鮮明に感じ取ったのです。帰国後、デザイナーとして活動する中で、日本人だからこそ世界に向けて発信できることは?と考え続けた結果、辿り着いたのが『所作』という日本特有の美学でした。
この気づきを体現する手段として芸者に興味を持ち、芸者になる方法を調べ、置屋の扉をたたいて、芸者の世界に入りました。日本舞踊・礼儀作法・着付け・ふるまい方・茶道・書道・生け花など、日本の伝統文化やお座敷における総合芸術を体得しながら、同時に最先端のプログラミングとデザインを習得する、といった日々を過ごしました。今の私の活動のコアとなっている「デジタルと所作の融合」は、この頃の経験から育まれたと思います。
独立後はこれまでの経験をユニークに捉えていただく機会に恵まれ、デザインに『所作』を取り入れる数々のプロジェクトに携わっています。最近では最先端の技術者や多様なジャンルのプロフェッショナルから、コラボレーションのオファーをいただいていますし、海外でも自分が所作デザイナーとして行うプロジェクトが認められてメディアの取材を受けることも増えました。海外のデザイナーと話をしていても「Shosa っていいよね」と評価していただき、今はアメリカにスタジオを開こうと準備をしていて、とても楽しみにしています。
「自分が自分であるためにデザインする」という姿勢を私は大切にしています。表現者として軸やアイデンティティを持つことが、これからの時代は必要になると思うのです。自分だけのスキルセットを思い描ける人が活躍できる新時代に、デザインワークにおける必須スキルを身につけたら、ぜひ自分だけの武器を見つけて探求してください。自分が創り上げたスキルセットは誰にも奪われません。そして、AIではまだ再現できない非言語領域や、複雑な感情表現など心の琴線に触れるようなアイデアを駆使して、人の心を動かすものを生み出すデザイナーを目指していただきたいと思っています。